イギリスの洋上に世界最大8MWの風力発電機、32基が2017年に運転開始へ:蓄電・発電機器
洋上風力発電で世界をリードするイギリスの沖合で、出力8MWの超大型機32基を導入する計画が進んでいる。三菱重工業とデンマークのヴェスタス社の合弁会社が開発した世界最大の洋上風力発電機を初めて採用する。2016年に沖合で設置工事に入り、2017年中に全面運転を開始する予定だ。
超大型の洋上風力発電機を導入する場所は、ビートルズやプロサッカーチームで有名なリバプール市の沖合にある。水深が最大でも17メートルの浅瀬に、発電設備を海底に固定する着床式で32基を設置する計画だ。デンマークに本拠を置く洋上風力発電事業者のDONG Energy社が進めている「Burbo Bank Extension」と呼ぶプロジェクトで、2017年中に32基の稼働を予定している(図1)。
1基の出力が8MW(メガワット)の風力発電機は、三菱重工業とデンマークのヴェスタス社が2014年4月に設立したMHI Vestas Offshore Wind社の製品である(図2)。羽根(ブレード)の長さは80メートルあり、日本の福島沖で建設中の7MWの風力発電機と同じ長さだ。福島沖の風力発電機も三菱重工業が開発した。MHI Vestas社によると、商用の洋上風力発電機では現在のところ8MWが世界で最大の発電能力になる。
発電所を建設するリバプール沖は年間の平均風速が毎秒9.2メートルもある。風力発電には毎秒5メートル以上の平均風速が必要とされていて、その条件を大幅に上回る絶好の風況だ。32基の合計で発電能力は256MWになり、イギリスの標準家庭で18万世帯分の電力を供給することができる。
イギリスの標準家庭が1年間に使用する電力量は約4000kWhで、それをもとに年間の発電量を計算すると7億2000万kWhになる。合計256MWの発電所の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は32%になり、洋上風力発電の標準値である30%を超える高い効率を見込む。
洋上風力発電が盛んなヨーロッパの中でもイギリスの導入量は圧倒的に多く、2012年末の時点で約3000MWに達している(図3)。全世界でも第2位のデンマークと比べて3倍の規模があり、最先端の洋上風力発電所が続々と運転を開始している状況だ。
これに対して日本の近海では水深の浅い場所が少ないために、着床式ではなくて浮体式の洋上風力発電に取り組む必要がある。福島沖で建設中の浮体式による7MWの超大型機が2015年に運転を開始する見通しで、その成功に大きな期待がかかっている。
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