「エネルギーミックス」決定へ、原子力と再エネともに20%超の未来:2015年の電力メガトレンド(4)(2/2 ページ)
火力・原子力・再生可能エネルギーの構成比率を示す「エネルギーミックス」の目標値が2015年内に確定する。震災前に30%近くを占めていた原子力をどこまで復活させるのか。温暖化対策の一環で20%を超える水準まで稼働させる可能性があり、再生可能エネルギーの拡大にも影響を与える。
再生可能エネルギーは25%にも
エネルギーミックスを決めるもう1つの重要なファクターが再生可能エネルギーの拡大である。もともと政府は第3次エネルギー基本計画の段階で、2030年に再生可能エネルギーの比率を21%に高める目標を設定していた。
2012年に開始した固定価格買取制度によって、再生可能エネルギーの発電設備は想定を上回るペースで増え続けている。これまでに認定を受けた発電設備がすべて運転を開始すると、一気に目標値の20%に到達する(図4)。
認定設備のすべてが運転を開始することはないものの、2020年までに水力を含めた再生可能エネルギーで20%以上の電力量を供給することは難しくない。しかも電力の需要は国全体で減っていく。新しいエネルギーミックスでは2020年の再生可能エネルギーの比率を25%程度に設定するのが妥当だろう。
残る5割強を火力でカバーすると、ちょうど2000年あたりの状態と同様になる。その結果、発電に伴うCO2排出量は現在よりも3割程度は少なくなる見込みだ。2013年に開催したCOP19で、日本は「2020年までに2005年度比で3.8%削減」の目標を掲げた。火力の比率を5割近い水準まで引き下げることができれば、この目標値は十分にクリアできる。
政府が1月中にも委員会で検討開始
再生可能エネルギーを20%以上に高めれば、欧米の先進国と比較しても見劣りしない(図5)。原子力の比率が際立って高いフランスを例外として、先進国のエネルギーミックスは火力発電の燃料の違いを除いて同じような構成になる。日本が温暖化対策で果たすべき最低限の責任である。
政府はエネルギーミックスを検討する「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置して1月中にも協議を開始する。遅くとも夏までには素案を公表する見通しだ。同時に電源ごとの発電コストを試算するワーキンググループを設けて、最新のデータをもとに発電コストを見直す。
適正なエネルギーミックスを決めるためにはCO2排出量のほかに、電気料金に影響する発電コストも考慮する必要がある。従来の試算では原子力の発電コストが最も低かった(図6)。ただし震災後に義務づけられた安全対策の費用が想定以上に膨らんでいることから、それに伴って発電コストも高くなっている。一方で太陽光の発電コストは着実に下がってきた。
エネルギーミックスは日本の将来を左右する極めて重要な指標である。政府は電力会社の意向に合わせて設定することのないように、世界の動向をふまえながら未来志向の目標を掲げるべきだ。2020年代からは水素エネルギーも対象に加わってくる。
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