スマートメーターのデータを小売事業者へ、電力使用量を60分以内に提供:動き出す電力システム改革(27)
小売の全面自由化が始まる2016年4月には、家庭に設置したスマートメーターのデータが電力会社以外の小売事業者にも提供される予定だ。電力会社のシステムで各家庭の30分単位の電力使用量を算出したうえで、小売事業者ごとに分割したデータを取得できるようになる。
第26回:「電力会社との売電契約を解消しやすく、自治体に競争入札を促す」
2015年度から全国各地の家庭を対象に、スマートメーターの設置が本格的に始まる。スマートメーターを使うと30分単位の電力使用量を把握できるようになり、電力会社は電気料金の検針を自動化できるほか、使用量のデータを使って節電サービスなどを提供することができる。
2016年4月に小売の全面自由化が始まる時点では、電力会社以外の小売事業者も同様のサービスを提供できるようにしなければ公平な競争にならない。そのために必要なシステムの検討が「広域的運営推進機関設立準備組合」を中心に進んでいる。2015年2月中にシステムの内容が固まる予定で、1年後の運用開始に向けて開発作業に入る。
スマートメーターのデータの送り先には3通りのルートがある(図1)。1つは電力会社向けで「Aルート」と呼ぶ。さらに電力会社を通じて小売事業者などにデータを送るのが「Cルート」である。AルートとCルートを経由して、スマートメーターのデータが小売事業者に渡される仕組みだ。このほかに家庭向けにデータを提供する「Bルート」がある。
政府は電力会社と小売事業者が同等の競争条件のもとで顧客サービスを提供できるように、各家庭の30分単位の電力使用量のデータが60分以内に小売事業者まで届くことを基本方針にしている。例えば午後1時から1時30分までの30分間の電力使用量のデータは2時30分までに小売事業者が取得できるようにする。
このデータを使って小売事業者は家庭の顧客に対して、使用量の見える化や節電アドバイスなどのサービスを提供することができる。公平な競争のためには、電力会社の小売部門も同じ仕組みで各家庭の情報を取得するように統一しなくてはならない。
こうしたスマートメーターからのデータを小売事業者に提供するシステムには主に2つの要件がある。1つは30分単位の電力使用量を60分以内に集計して提供するための処理スピード、もう1つは小売事業者が自社の顧客のデータだけを取得できるようにするセキュリティの確保だ。
東京電力が想定しているシステムのイメージを見ると、スマートメーターから送られてくるデータを集計する「MDMS(メーターデータ管理システム)」に加えて、小売事業者と連携するための「託送システム」を構築する(図2)。さらにセキュリティを確保するために、小売事業者は認証サーバーを経由して、託送システム内の特定の領域(DMZ)にしかアクセスすることができない。
それぞれのシステムは電力会社が個別に開発するために、機能や処理スピードに差が生じる可能性がある。ただし小売事業者とデータをやり取りする部分は共通の仕様が決められている。どの電力会社のシステムにも同様の手順でアクセスできるようになる。
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