再生可能エネルギーの出力制御に課題、運用は電力会社に依存:法制度・規制
再生可能エネルギーによる発電設備の導入量を拡大するために、政府は緊急対策として出力制御の新ルールを導入した。太陽光と風力の発電量を抑制することが目的だが、実際に出力を制御する対象を選ぶのは電力会社である。一部の事業者が不利になる可能性があるほか、出力制御の方法も未定だ。
九州電力などによる再生可能エネルギーの接続保留を解消するために、経済産業省は2015年1月26日付で省令を施行して新しいルールを導入した。地域によって電力の供給量が需要を上回る場合には、電力会社が新ルールに基づいて発電設備の出力を制御することができる。
出力制御の順番は火力発電が最初で、それでも余剰電力が生じる場合には揚水式の水力発電に供給する。その後にバイオマス、最後に太陽光と風力の発電設備の出力を制御するルールになっている(図1)。太陽光の場合には出力制御の上限日数や時間数が決められているものの、東京・中部・関西を除く全国7地域では上限を超えて出力を制御することができる(「指定電気事業者制度」による)。
再生可能エネルギーを活用する発電事業者にとっては厳しいルールで、売電収入が大きく減少しかねない。しかも出力制御の対象を選ぶのは電力会社である。最優先で制御することになっている火力発電に対しても、現状のルールでは「安定供給を前提に必要な限度まで」と抽象的な表現にとどまっているため、電力会社の裁量で出力制御の範囲を決めることが可能だ。
そのうえで再生可能エネルギーの出力を制御するわけだが、数多くある発電設備に対して公平な条件を割り当てるのは現実的に難しい。新ルールを策定した資源エネルギー庁も「出力制御の実際の適用にあたっては、電力会社の運用実務上の限界により、結果的に発電事業者ごとの制御日数に差異が発生すること等も一定程度許容せざるを得ないのではないか」と予想している。
発電事業者から見た公平性を確保することは極めて困難な状況だ。とはいえ売電収入に影響する問題であり、発電事業者は電力会社の運用方法を注視せざるをえない。加えて出力制御のシステム構成が電力会社に依存することになり、その方法によっては発電事業者のコスト負担が大きく増えてしまう。
資源エネルギー庁が想定している出力制御システムの構成は2通りある(図2)。1つは発電事業者が専用通信回線を設置して電力会社のサーバーと接続する方法だ。出力制御を実施する時に人手を要することもあってコストが増大する。
もう1つはインターネットや公衆通信ネットワークを使って、電力会社と発電事業者のサーバー間で連携する方法である。この場合は電力会社が出力制御カレンダーをサーバーに用意して運用する必要があり、電力会社のコストが増える。
政府は現状の課題に対して早急に改善策をまとめたうえで、電力会社と発電事業者に準備を求める必要がある。直近で出力制御の可能性があるのは、電力需要が少なくなる5月のゴールデンウイークである。それ以前に電力会社は出力制御の見通しを公表することになっている。
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