バイオマス発電+電気トラック、CO2を排出しない循環型ごみ収集システム:スマートファクトリ
バイオマスや水素の活用に取り組む神奈川県の川崎市が廃棄物発電と電気自動車を組み合わせたエネルギー供給システムを導入する。ごみ収集車に電気トラックを使って、ごみ焼却施設で発電した電力を利用する計画だ。電気トラックに搭載する電池の充電・備蓄・交換体制も整備する。
川崎市とJFEエンジニアリングが共同で、廃棄物発電を活用した「エネルギー循環型ごみ収集システム」の実用化に乗り出す。システムの内容を具体的に検討したうえで、2015年度中に川崎市のごみ処理施設で実証試験を始める予定だ。
ごみ収集車は日産自動車が開発中の電気トラック「e-NT400テストトラック」がベースになる(図1)。
市販の電気自動車「日産リーフ」に使われている電動モーターやリチウムイオン電池を小型トラックに搭載した車両で、航続距離は約60キロメートルである。急速充電機能も備えていて、30分間で蓄電容量の80%まで充電することができる。
ごみ処理施設にはリチウムイオン電池の充電・備蓄・交換が可能な体制を整備して、ごみ収集車の充電時間を短縮する考えだ(図2)。ごみを焼却した熱で発電して、その電力でリチウムイオン電池を充電する。生物由来のバイオマス発電により、CO2を排出しないエネルギー供給とごみ収集のシステムを構築することができる。ごみ収集車の排気ガスもゼロになる。
災害が発生して地域の電力供給が止まった場合でも、ごみ収集車が市内の避難施設まで走行して電力を供給することができる(図3)。災害で生まれたごみを収集して発電すれば、電力の供給を長期間にわたって続けることも可能になる。
電池の充電・備蓄・交換の仕組みを含めてシステム全体の開発をJFEエンジニアリングが担当する。JFEエンジニアリングは全国各地のごみ処理施設に廃棄物発電プラントを納入した実績があり、廃棄物で発電した電力の小売事業にも取り組んでいる。川崎市の実証試験で効果を発揮すれば、全国のごみ処理施設に同様のシステムを展開できる期待がある。
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