日本最大の再生可能エネルギー発電事業者に、東京電力の新カンパニー:電力供給サービス
発送電分離に向けて組織改革を進める東京電力が水力と新エネルギーの発電事業を独立のカンパニーに分離する。水力を中心に再生可能エネルギーの発電設備を増強して収益の拡大を図る計画だ。日本で最大の再生可能エネルギーを扱う発電事業者になり、小売全面自由化で競争力を発揮する。
東京電力は2015年4月1日付けで3つの社内カンパニーを新設する(図1)。その中で注目すべきは、再生可能エネルギーの発電事業を担当する「リニューアブルパワー・カンパニー」である。従来は送配電事業の「パワーグリッド・カンパニー」の中にあったが、独立のカンパニーに分離して再生可能エネルギーによる発電事業を加速させる。
新カンパニーは既存の水力発電所の設備を更新して出力を増強する「リパワリング」に注力しながら発電規模を拡大していく方針だ。東京電力は関東を中心に1都8県で水力発電所を運転している。合計すると164カ所にのぼり、発電能力は945万kWに達する。再生可能エネルギーの発電事業者としては日本で最大になる。
当面は本社機構の「コーポレート」の中に位置づけるが、2016年4月の小売全面自由化後に独立の事業会社として分割する可能性が大きい。家庭を中心に原子力に対する抵抗感が強いため、原子力発電所を運営する電力会社から契約を切り替える利用者の増加が見込まれる。再生可能エネルギーの発電事業を独立の会社に分割すれば、発電と小売の両面で競争力を発揮しやすくなる。
東京電力は揚水式による大規模な水力発電所の開発にも取り組んでいる。群馬県では最大出力が282万kWに達する「神流川(かんながわ)発電所」の設備を拡大中だ。全体で6基のうち2基が営業運転を開始していて、残る4基を2023年度から順次稼働させる計画である。上部ダムと下部ダムが作り出す653メートルの落差で発電する国内で最大の揚水式発電所になる(図2)。
揚水式を含めて水力発電所の運転・保守は引き続き送配電事業部門が担当するが、小売全面自由化後には新カンパニーが発電事業者として電力を販売することになる。
東京電力はメガソーラーも3カ所で運転している。神奈川県で2カ所、山梨県で1カ所の合計3カ所で発電能力は3万kWある(図3)。このほかに東京都の八丈島で地熱発電所(3300kW)を運転中だ(図4)。
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