大容量蓄電池の「最適解」が分かった、太陽光に役立つ:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
御船ホールディングスと韓国Samsung SDI、エジソンパワーは、2015年3月、鹿児島県の徳之島に出力2MWの「御船徳之島太陽光発電所」が完成したと発表した。2MWの大型蓄電池を併設したことが特徴。発電所運営の収益を損なわず、系統に与える影響を抑えるよう、蓄電池の量を最適値にできたという。
どのような構成を選んだのか
図4は太陽電池モジュール以外の装置が分かりやすいように撮影したもの。菱形のロゴが付いた左端のコンテナが蓄電池、その右の30フィートコンテナに格納されているのが蓄電池用のパワーコンディショナー。中央に4つ並んでいるのが、太陽電池用のパワーコンディショナー(出力500kW)だ。
太陽電池と太陽電池用のパワーコンディショナー(AC-DC変換装置)、蓄電池と蓄電池用のパワーコンディショナーの関係を図5に示す。交流で太陽電池と蓄電池を接続するいわゆる「ACリンク」の構成とした。図5の右下の系統負荷は徳之島島内の需要家を表す。九州電力の2つの要求を満たすようにシステムを制御しているのが、制御監視装置(EMS)だ。1秒当たりの出力の変化率を制限内に抑えるために蓄電池の充放電を制御する。太陽光発電所の出力が0になった場合に備えて、蓄電池の容量を維持することもEMSの働きの1つだ。
蓄電池セルの容量は60Ah。これを176セル直列とし、さらに20並列して780kWhの容量を実現している。
経済的に成り立つのか
大規模太陽光発電所に蓄電池を併設する場合、最大の関心事は経済的に成り立つかどうかだろう。
「御船徳之島太陽光発電所を立ち上げるための事業費は、計画段階の7億円規模に収まった。今回の発電所では『20年間の蓄電池性能保証プログラム』を御船ホールディングスと当社の間で結んでいる。プログラムの費用は毎年、売電収益の一部から支払う契約だ。この支払いがあった上で、御船ホールディングスが事前に計画した内部利益率(IRR)を実現できることに意味がある」(エジソンパワー)。
「プログラムでは初期の性能を維持するため、故障品の交換の他、徐々に太陽電池セルを増設していくことで対応する」(エジソンパワー)。これによって、780kWh、2MWという初期の仕様を維持できるとした。
なお、大型蓄電池を導入したとしても、太陽光発電所の出力量のうち、売電可能な割合は高くならないのだという。「パワーコンディショナーなどの損失があるため、売電できる電力量は0.7%、減少する。ただし、蓄電池を併設しないと、最大700kW/秒という変化率が生じてしまい、そもそも大規模太陽光発電所を徳之島に導入することはできない」(エジソンパワー)。
そもそも導入が不可能だった場所に、太陽光発電を導入することが可能になり、内部収益率も維持できることが、蓄電池を設置する意味だと言えそうだ。
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