35億円を投じた木質バイオマス発電所が完成、1万2600世帯分の電力を供給:自然エネルギー
バイオマス発電の取り組みが活発に進む宮崎県に新しい発電所が誕生した。地域で発生する間伐材などを燃料に利用する木質バイオマス発電所で、発電能力は5.75MWある。4月中に発電を開始して、1万2600世帯分の電力を供給できる見込みだ。35億円の事業費の一部を国や自治体が提供した。
宮崎県の中部に位置する川南町(かわみなみちょう)は農業と林業で発展してきた(図1)。戦後に全国各地から多くの人が集まって開拓したことから「川南合衆国」とも呼ばれている。
豊かな自然に恵まれた田園地帯の一角に、「宮崎森林発電所」が3月31日に完成した(図2)。
地域で発生する間伐材や林地残材などの未利用木材を年間に7万2000トンも使って発電する。発電能力は5.75MW(メガワット)で、年間の発電量は4550万kWhを見込んでいる。一般家庭で1万2600世帯分の使用量に相当する。川南町の総世帯数(約6100世帯)の2倍強に匹敵する規模になる。
このプロジェクトは国と地域の力を結集して推進する点が特徴だ。事業費の約35億円のうち3億円を、環境省が実施する「地域低炭素投資促進ファンド事業」の執行団体であるグリーンファイナンス推進機構が出資した(図3)。地元の川南町も3億5000万円を補助金として提供したほか、宮崎県が10億5000万円を無利子で融資している。
燃料になる未利用木材の供給に関しては、県内の有力な森林組合が集まって「宮崎県北部地域川南バイオマス発電林業振興協議会」を発足させた。森林組合の支援を受けながら、発電所が山林から木材を収集する物流体制を構築して安定的に燃料を調達する。さらに収集した木材の乾燥と木質チップの製造まで一貫処理する(図4)。
宮崎森林発電所は4月中に運転を開始して、発電した電力は新電力に売電する予定だ。固定価格買取制度の買取価格(1kWhあたり32円、税抜き)を適用すると、年間の売電収入は約14億5000万円にのぼる。未利用木材の調達コストは資源エネルギー庁の調査によると、1トンあたり1万〜1万2000円程度かかる。年間に7万2000トンで8億円前後になる。
このほかに発電所の運転維持費が必要になるが、それを加えても年間に数億円の利益を見込める。買取期間の20年間で、事業費の35億円は十分に回収できる予定だ。発電事業の出資者には地元の企業のほかに、再生可能エネルギーの投資事業を全国で展開するくにうみアセットマネジメントが参画した。くにうみ社は岡山県の瀬戸内市で建設中の日本最大のメガソーラーにも出資している。
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