鹿の放牧地で発電と農業を同時に実現、群馬で出力1.1MWのソーラーシェア:自然エネルギー
群馬県沼田市で農作物と太陽電池が光を分けて利用する「ソーラーシェアリング」の実現に向けたプロジェクトがスタートした。国際ランド&ディベロップメントが、約4ヘクタールの鹿の放牧地として利用されていた土地に「沼田市利根町太陽光発電所」を建設する。
日本アジアグループ傘下の国際ランド&ディベロップメント(以下、国際L&D、東京都千代田区)は、椎坂建設が群馬県沼田市で建設する「沼田市利根町太陽光発電所(仮称)」の設計管理業務を受託し、このほど建設をスタートした。完成は2015年7月を予定している。
椎坂建設が賃借した土地に年間発電量で一般家庭の約370世帯に相当する出力約1.1MW(メガワット)の屋根型太陽光発電施設を設置し、ソーラーシェアリングによる売電事業を行う。発電所の稼働後には国際L&Dが運営管理業務を行う予定だ。発電所の事業計画面積は約4万平方メートルで、日能興産製のパネル1万1040枚を設置する。国際L&Dがソーラーシェアリングの案件を扱うのは今回が初となる。「今後も案件によっては対応する可能性はある」(国際L&D)としている。
ソーラーシェアリングとは農地に支柱を立てて太陽光発電設備を設置し、農業と発電を同時に行うことだ。農林水産省ではこの発電設備を「営農型発電設備」と呼んでいる。農地の計画的・効率的な利用で農家の安定的な経営に貢献するとともに、再生可能エネルギー普及にもつながることから今後の導入促進が期待されている。農林水産省では農村や漁村で太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入するメリットについて、経済貢献と機能貢献の双方を挙げており、導入により地域が自主的に自立することの重要性を指摘している。
今回の事業で発電設備を設置する土地(図1)は、約4ヘクタールの山林の一部。鹿の放牧地として利用されているが、ソーラーシェアリングの導入に伴って農作物が栽培されることになった。非耕作地が大規模太陽光発電施設の用地としてだけでなく、耕作地としても再生されることになる。
国際L&Dは前身の国際航業の不動産事業部門として、不動産の開発・運営管理、環境対策、住宅供給などの事業を国内外で実施している。最近では再生可能エネルギーの活用、省エネ・蓄エネなどエネルギーソリューションサービス事業を拡大している
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