再生エネ導入量全国1位の福岡県、躍進を支える「地方主導」の力:自然エネルギー(4/4 ページ)
再生可能エネルギーの導入量で全国1位の実績を誇る福岡県。国内でもエネルギー政策に関して先進的な取り組みを進めてきた背景について、福岡県 エネルギー政策室の丸林啓太氏に聞いた。
エネルギー利用の効率化へ、スマートグリッドは経済性が課題
スマートジャパン 今後の福岡県のエネルギー政策に関する指針について教えてください。
丸林氏 福岡県として、つまり地方としてエネルギー問題に対してどう取り組んでいくべきなのかを産学官で検討するために、2013年に「福岡県地域エネルギー政策研究会」を立ち上げました。2013〜2015年にかけて全15回の研究会を開催し、そこでさまざまな意見交換を行ってきました。2015年3月5日には、同研究会での検討事項の内容をまとめた報告書も公開しています。
地域の取り組みとしては、今後さらにエネルギーを無駄なく活用する方法を追求してかなくてはなりません。エネルギー価格は非常に不透明ですが、その価格変動は産業競争力にも直結する問題でもあります。地域の産業をいかに守っていくかを考えた場合、やはりエネルギーを効率良く利用するための取り組みは進めていく必要があります。
こうしたエネルギーの需要だけでなく、供給についても地域としてもっと考えていかなくてはならないなと思います。研究会では原発問題と向き合うべきという意見も出ています。その一方で、やはりエネルギーの供給源を一部の方法に頼ってしまうのは危険な面もあるかもしれない。するとエネルギー供給の多様化や分散化をもっと進めていかないといけないのではないかという意見もあります。
スマートジャパン エネルギー利用の効率化というと、スマートグリッドなどのICTを活用した技術についてはどう捉えているのでしょうか。
丸林氏 研究会からもそういった新たな技術の活用を推進すべきという提言が出ています。しかしスマートグリッドやスマートコミュニティの実現において課題となるのが経済性の部分です。なかなか採算が取れないことが多い。現在、福岡県みやま市が経済産業省の「大規模HEMS情報基盤整備事業」に参画しています。これは約2000世帯にHEMSを設置し電力使用量データを基に電気料金の最適化や、高齢者の見守りサービスなどを提供するという実証実験(図8)です(関連記事)。
スマートグリッドはエネルギーを効率良く運用するために考えられたものです。このみやま市の実証実験のように、集めた電力の使用データを活用してサービスを提供する電力事業者以外の企業が参入して、新たなビジネスを生むことが経済性の問題を解決する1つの手段になるのではないかなと考えています。
水素に関する取り組みや、再生可能エネルギーの導入、地域への企業誘致など、これらは全てすぐに大きな結果が出るものではありません。福岡県としては時代に合わせた指針をしっかりと明示し、その都度最適な取り組みを推進していくことが重要だと捉えています。また今後は風力発電や燃料電池など、産業として裾野が広い分野への取り組みを進めることで福岡のエネルギー関連産業をより発展させていくことも重要だと考えています。
関連記事
- CO2フリーの水素を下水から作る、福岡市で燃料電池車へ供給開始
下水処理場で発生するバイオガスから水素を製造する世界で初めての実証施設が4月から稼働する。福岡市の下水処理場の中に水素製造装置と水素ステーションを設置して、燃料電池車に水素を供給する計画だ。生物由来のバイオガスで作る水素はCO2を排出しないクリーンエネルギーになる。 - 「水素タウン」で先を走る、太陽光やバイオマスから水素も作る
福岡県は固定価格買取制度による太陽光発電の導入量が全国で第1位になった。さらに10年以上前から推進してきた水素エネルギーの取り組みが新たなフェーズに入る。水素で発電する燃料電池と太陽光の組み合わせに加えて、バイオマスから水素を製造する実証プロジェクトも始まる。 - 燃料電池車をタクシーに、福岡市で5台の導入が決まる
国土交通省がバスやトラックなどを対象に2012年度から実施している「地域交通グリーン化事業」で初めて燃料電池車が選ばれた。補助金を適用して福岡市のタクシー5台に燃料電池車を導入する。福岡市は2008年度から「福岡水素タウン構想」を推進してきた水素エネルギーの先進地域である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.