米ベンチャーと電力サービスを世界展開、仮想発電所の実現も:電力供給サービス
三井物産はエネルギー管理サービスを提供する米国のベンチャー企業Stemへの投資を発表。三井物産の顧客基盤を活用し、Stemの蓄電池とICTを組み合わせた電力サービスをグローバルに展開する方針で、将来的には仮想発電所の実現も目指す。
2016年4月にスタートする電力の小売全面自由化に向けて、日本国内の電気事業者が海外企業と連携する動きが広がってきた。2015年4月10日には新電力のイーレックスが米国のSpark Energyと日本国内における低圧分野への参入に向けて協業を検討することを発表している(関連記事)。これに続き同年4月14日には、独立発電事業者(IPP)として発電事業に注力している三井物産が、エネルギー管理サービスを提供する米国のStemへの出資を発表した。
2009年創業のベンチャー企業であるStemは、蓄電池とICTを組み合わせたエネルギーマネジメントを強みとしている。米国では再生可能エネルギーの発電量の増加に伴う電力網の不安定さと、ピーク時の電力使用量に応じて課される基本料金、いわゆるピーク料金の高騰が問題視されている。カリフォルニア州をはじめとする一部の州では、ピーク料金が全電力料金の半分を占める場合もある。
そこでStemはカリフォルニア州の商業施設などを対象に、リアルタイムの電力需要予測を基に顧客のピーク時における電力の調達先を電力網から蓄電池に切り替えることで、電力消費量を変えることなくピーク料金を抑制できるサービスを提供している。さらに電力会社向けには電力網の需給ひっ迫に応じ、商業施設などの顧客設備に導入した蓄電池から放電を行うデマンドレスポンスサービスも提供している(図1)。
三井物産はこうしたStemの事業がカリフォルニア州以外にも水平展開が可能だと判断。今後は三井物産の顧客基盤を活用し、2社共同でStemの事業を日本を含むグローバル市場に向けて展開していく。さらに三井物産はStemの事業をより発展させ、ICTの活用により多くの顧客施設に設置した蓄電池を連携制御することで、電力を大規模に効率良く管理する仮想発電所の実現も目指す。
仮想発電所は、大規模な1点集中型の発電所を作るのではなく、複数の分散型電源を統合制御することで、あたかも1つの発電所であるかのように見せる方法だ。遠隔地に大規模発電所を建設する場合と比較して、需要地までの送電線の整備費といった投資コストを削減できるメリットがある。
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