復興住宅地区に太陽光発電と蓄電池、灯りが消えない街を目指す石巻市で:スマートシティ
東日本大震災で最大の被害を受けた宮城県の石巻市がスマートコミュニティの構築計画を着々と進めている。4つの地区を対象に太陽光発電と蓄電池を設置しながら、最先端のエネルギー管理システムで連携させる試みだ。4地区のうち復興住宅地区では、東北電力が太陽光発電所の建設を開始した。
石巻市が災害に強いスマートコミュニティの構築に乗り出したのは、震災から7カ月後の2011年10月のことである。復興に向けてさまざまな事業を検討する中で、第1に挙がったのが「エコ・セーフティタウン」の構想だ。住宅や公共施設に太陽光発電を導入して、再生可能エネルギーを活用した持続可能な街づくりに取り組んでいく。
その一環で東北電力と東芝が石巻市と協力して、最先端のエネルギー管理システムを駆使したスマートコミュニティを構築中だ。復興住宅やオフィスビルの屋根に太陽光パネルを設置する一方、蓄電池を導入して災害時の電力供給や太陽光発電の出力変動にも対応できるようにする(図1)。
対象になるモデル地区は市内の4カ所に分散させる(図2)。各地区をCEMS(地域エネルギー管理システム)で連携させる点が最大の特徴である。4カ所のうち復興住宅が集まる「新蛇田(しんへびた)地区」では、東北電力が4月20日に「石巻蛇田太陽光発電所」の建設工事に着手した。2016年3月に運転を開始する予定だ。
発電能力は300kW(キロワット)で、一般家庭で90世帯分の電力を供給することができる。合わせて容量が120kWh(キロワット時)の蓄電池を設置して、災害時にも電力の供給を可能にする。120kWhは一般家庭の電力使用量(1日あたり10kWh)に換算して12世帯分に相当する。
新蛇田地区では500戸を超える規模で復興公営住宅の整備が進んでいる。公営住宅の屋根に太陽光パネルを設置するほか、共用部に蓄電池を導入してエネルギーの自給自足を実現する仕組みだ(図3)。さらに全戸にHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を設置してエネルギーの最適利用を図る。
太陽光発電所が運転を開始すると、新蛇田地区の発電量は大幅に増える。天候によって出力が変動して電力を不安定にする可能性がある。この問題を回避するために「系統安定化システム」を構築して、蓄電池を制御しながら電力量を調整できるようにする(図4)。さらに3つの地区のシステムとも連携して、各地区の発電量と消費量をもとに地域全体で需給バランスを調整することが可能になる。
石巻市はスマートコミュニティの構築を通じて、CO2を排出しない「低炭素のエコタウン」を形成するのと同時に、震災の教訓をふまえて「災害時にも灯りと情報が途切れない安全・安心なまち」を目指す(図5)。「世界の復興モデル都市」に向けて着実に前進していく方針だ。
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