ミカン畑を減反した跡地、20年以上かかってメガソーラーに再生:自然エネルギー
1980〜90年代にオレンジの輸入自由化に伴って、全国でミカン畑の減反政策が実施された。神奈川県の南西部では減反した跡地を工業団地に開発する計画を進めたものの失敗に終わっていた。20年以上も放置されたままの跡地にメガソーラーが完成して、2900世帯分の電力の供給を開始する。
神奈川県の南西部に位置する中井町に、ミカン畑を減反した跡地が20万平方メートルの広さで残っていた。20年以上にわたって用途がなく放置されてきた場所だが、県内で3番目に大きいメガソーラーが完成して、本日4月27日に運転を開始する(図1)。
発電能力は9.8MW(メガワット)で、設置した太陽光パネルの枚数は約4万枚にのぼる(図2)。年間の発電量は1035万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)の2900世帯分に相当する。中井町の総世帯数(3400世帯)の8割以上をカバーできる規模になる。
メガソーラーの中央には展望施設の「太陽の公園」を整備した。一般に公開して環境教育にも利用する予定だ。さらに敷地に隣接した場所にトイレを造り、災害時の非常用電源として太陽光発電設備と蓄電池も設置した。
このプロジェクトは震災後の2011年10月に開始した「かながわスマートエネルギー構想」の一環で、神奈川県が中心になって推進してきた。発電事業者のスパークス・グリーンエナジー&テクノロジー(SGET)が神奈川県から用地を借り受けて建設・運営する。発電した電力は固定価格買取制度を通じて全量を東京電力に売電する方針だ。
県と地元の中井町、住宅供給公社、SGETの4者が基本協定を締結したうえで、地域経済の活性化と防災対策の強化、再生可能エネルギーの普及を図る。土地の所有者である住宅供給公社などが神奈川県に土地を貸与して、事業者のSGETが利用できる形をとった。SGETは事業資産にかかる固定資産税を20年間にわたって減免される。
土地の造成費や発電設備の建設費を含めて総事業費は約40億円かかった。メガソーラーを建設する以前には樹木が生えている場所も多く残っていて、造成のために伐採した木は住宅供給公社の団地再生事業などに生かした(図3)。
関連記事
- 富士山を望むメガソーラーが47億円で完成、東京都も出資して神奈川県内に
神奈川県で最大級のメガソーラーが県西部の広大な空き地に完成した。発電能力は12.5MWに達して、一般家庭で3500世帯分の電力を供給することができる。総事業費は47億円かかり、東京都が出資する官民連携による再生可能エネルギー事業の投資ファンドが一部を負担した。 - メガソーラーの電力で年間150万円を削減、神奈川県でエネルギーの地産地消
神奈川県の中部にある人口22万人の厚木市が再生可能エネルギーの地産地消に取り組んでいる。市内にメガソーラーを誘致する一方、発電した電力を15カ所の公共施設で利用する計画だ。新電力を通じて安価に電力を調達する方法で、年間の電気料金を150万円ほど削減できる。 - 水素とバイオマスで一歩先へ、化石燃料を使わない電力源を地域に広げる
火力発電所が林立する神奈川県の臨海地域で新しいエネルギー供給体制を構築する動きが活発になってきた。中でも注目を集めるのは水素を燃料にする川崎市の発電プロジェクトで、2015年の商用化を目指して計画中だ。同じ地域内では日本最大の木質バイオマス発電所の建設も始まった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.