下水汚泥ガス型バイオマス発電のグリーン電力価値を熊本県が売却:自然エネルギー
熊本県は、企業などの環境改善活動への支援を目的に熊本市北区にある熊本北部浄化センターのバイオマス発電で生み出すグリーン電力価値を売却することを明らかにした。
バイオマス発電など再生可能エネルギーによって発電された「グリーン電力」は二酸化炭素排出量の削減や化石燃料の使用量削減といった環境付加価値(グリーン電力価値)を持つ。この価値を電気そのものと切り離して、証書として取引する仕組みが「グリーン電力証書システム」だ。
証書を購入する企業や自治体にとっては、証書に記載された電力量の自然エネルギー普及に貢献しグリーン電力を使用したと見なされる利点がある。また、再生エネルギーを利用したくても近隣に都合のいい発電拠点がないような場合は調達できない場合があったが、このシステムを利用することで、簡単に再生可能エネルギーを活用できる(正確には「活用したと見なされる」)。一方で、証書を売却する自治体や企業にとっては、その費用を生かすことで新たなグリーン電力の発電設備拡張などに利用できる利点がある。
グリーン電力証書発行事業者は、このシステムを通してグリーン電力価値を発電事業者から移転し、自らの利用あるいは第三者への売却を目的にグリーン電力証書を発行する者をいう。今回、熊本県はこのグリーン電力証書を発行する権利を売却するということになる。
対象となる熊本北部浄化センターのバイオマス発電設備は、既にグリーンエネルギー認証センターから、グリーン電力発電設備の認定を受けている。今回の募集で決定する事業者は、認証センターに対しグリーン電力認定済発電設備の名義変更申請を行う。そして認定後、認証センターから同設備で発電したグリーン電力量の認証を受け、グリーン電力証書を発行する。募集期間は2015年5月22日までとなっている。
グリーン電力発電の受託契約数量は年間250万kWh(キロワット時)程度となる見込み。グリーン電力発電業務の受託契約期間は、基本的には契約締結の日から2018年3月31日までとなっている。
同浄化センターのバイオマス発電設備は発電方式として下水汚泥消化ガスを利用するリン酸形燃料電池を採用している。発電実績は平成26年度で約264万kWh。これまで、バイオマス発電設備で発電した電力は全て浄化センターで利用しており、今後も全量を自家消費する予定だ。
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