太陽光で風力発電を支える、電源レスのクラウド型風況監視システムを開発:自然エネルギー
日本電業工作は風況調査と測定データの遠隔監視が行える電源レスのクラウド型ワイヤレス監視システムを開発した。風力発電設備の導入に欠かせない事前の風況調査を行う際に発生する、風況観測機器の設置やデータの回収といったコストの削減に貢献するという。
通信機器の製造販売を手掛ける日本電業工作は、このほど小型の風力発電設備向けの風況調査と測定データの遠隔監視が行えるワイヤレス監視システムを開発した(図1)。これは柔軟なインタフェースと低消費電力が特徴の「Mu(ムー)センサ」を活用した電源レスのクラウド型遠隔監視システムで、風速計などの各種計測データを携帯電話回線経由でクラウドサーバへ送信し、一元管理が行える。インターネットを通してのリアルタイム監視や風況調査から運転開始後のモニタリングも可能だ。
監視システムを構成する各種センサーと無線装置は、太陽光パネルとバッテリーによる自立電源で運用できる。電源装置が不要となるため、設置の際に大規模工事を行う必要がなく、観測したい任意の場所に簡単に設置が可能で移動も容易に行える。こうしたメリットにより同社の従来システムを導入する場合と比較して、導入コストを約25%削減できるという。
各種観測データは10分毎にクラウドサーバへ送信されるが、送信間隔は変更が可能だ。観測現場へデータ回収に行く必要がなく、最新のデータを遠隔地からいつでも閲覧、ダウンロードできる。伝送に失敗したデータを次回の送信の際に併せて送信するリトライ機能も備えており、さらに過去の観測データは本体に内蔵されたメモリにも保存されるなどデータ保護にも配慮した設計となっている。
風力発電は発電設備の設置位置で発電量が大きく変化するため、事前の風況調査が重要となっている。これまでの風況観測機器は設置に大掛かりな工事が必要なものも多く、さらに測定員が現地までデータの回収に行く必要があったり、観測機器の電源が確保できなかったりなどさまざまなな課題があった。日本電業工作はこれらの課題を解決するため、ワイヤレスの利便性とデータ取得の信頼性、運用管理性を追求し、設置が容易でモニタリングがしやすいシステムの開発を目指した。
同社では今後、920MHz帯で広域センサーネットワークを構築し、長距離伝送を可能とする「マルチポイント監視システム」やカットアウト風速に達した場合でも風車の回転を止めずに Muセンサで失速制御をかける「運転制御機能」など、安全かつ効率的な発電を実現できるシステムの開発を予定している。
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