マイナス196度で電力を送る、伊豆半島を走る電車に超電導で:省エネ機器
鉄道の省エネルギー対策に取り組むJRグループの技術研究所が、超電導の送電方式による列車走行試験を実際の営業路線で成功させた。伊豆半島を走る鉄道の線路沿いに長さ6メートルの「超電導き電ケーブル」を敷設して、マイナス196度の液体窒素を流して超電導状態で送電を試みた。
鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は8年前の2007年度から「超電導き電ケーブル」の開発に着手して、これまでは研究所の構内にある試験線で列車の走行試験を繰り返してきた。いよいよ営業用の鉄道路線に導入して実用化に向けた段階に入る。静岡県の伊豆半島を走る民営の「駿豆(すんず)線」を利用して、世界初の列車走行試験を3月27日の深夜に実施したことを明らかにした(図1)。
駿豆線の鉄道用変電所に長さ6メートルの超電導き電ケーブルを敷設した。ケーブルの内部に液体窒素を循環させて、マイナス196度に冷却した状態で直流の電力を送る仕組みだ(図2)。走行試験では駿豆線の一部の区間5.6キロメートルを使って、3両編成の試験列車を往復運転させながら電力を供給することに成功した。
鉄道総研が開発した超電導ケーブルは両端に接続した冷却システムからマイナス196度の液体窒素を循環させる方式である(図3)。ケーブルの内部は液体窒素を流す層と電気を流す層が積み重なっていて、超電導の状態になるマイナス196度で電力を送ることができる。
超電導の状態では電気抵抗がゼロになるため、ケーブルで電力を送る間に損失が生じない。「き電線」と呼ぶ列車に電力を供給する電線を超電導ケーブルに置き換えることができれば、送電時の損失がなくなり、大量の電力を消費する鉄道の省エネルギーに有効である。
すでに鉄道総研の構内では長さ310メートルの超電導き電ケーブルを試験線に敷設して、車両を使った走行試験に成功している。一般的な鉄道の路線では300メートル程度の間隔で「き電線」が分岐することから、十分な長さの超電導ケーブルを使って送電する技術は確立している。今後は営業用の路線でケーブルの長さを延ばしながら実用化を進めていく。
2020年代の前半までに実用化して、送電時の電力損失を防いで5%程度の省エネルギーにつなげることが目標だ。さらに鉄道の沿線に設置した太陽光発電や風力発電などと組み合わせて、エネルギーの地産地消によるCO2排出量の削減にも取り組む(図4)。
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