下水汚泥の消化ガスで発電事業に乗り出す岩手県:自然エネルギー
岩手県は、同県北上市の北上浄化センターで発生する消化ガスを活用した発電事業を実施する方針を定め、それに伴う発電事業者の募集を行う。2015年6月上旬に募集公告を公表。同年9月上旬には優先交渉権者を選定し、下旬には基本協定を締結する計画だ。
岩手県が定めた「北上浄化センター消化ガス発電事業」は、エネルギー自給率向上や再生可能エネルギーを用いることで温室効果ガスの削減による地球温暖化防止に貢献することを目的に、北上浄化センターの供給するバイオマス資源である消化ガスの有効活用を図るもの(図1)。
発生した消化ガスを岩手県が発電事業者に供給するとともに、発電事業者が岩手県から浄化センター内に事業用地を借り受け、発電施設を建設。消化ガスによる発電事業(固定価格と買取制度を適用)および発電施設の設備認定、設計・建設・維持管理・運営を行う。また、発電の際に発生する排熱は消化槽の加熱熱源として利用する(図2)。
施設の設計・建設は事業契約締結の日から2017年3月31日までの期間に行う。維持・管理・運営は2017年4月1日から2037年3月31日までの期間と定めている。土地の賃貸料については1年当たり約200円/平方メートルとしている。
同事業の求める条件は、消化ガスの売却量は消化タンクの加熱用熱源として発電設備排熱による温水を供給するため消化ガス発生量の全量を使用できるもの。発電の際に発生する排熱は温水で県に返還することとし、返却する熱量は既設消化タンク3基を中温消化する。最大返還熱量の目安は1時間当たり1500MJ(メガジュール)。発生装置は、国内でバイオガスを燃料とした発電実績があるものを選定するという。
発電事業者は公募型プロポーザル方式により決定する。参加できる者は単者、共同企業体またはSPC(特別目的会社)設立を前提としたコンソーシアムで地方自治法施行令第167条の4の規定に該当しない者、プロポーザル参加資格申請書およびプロポーザル参加確認資料の提出期限から基本協定締結までの期間に、同県から指名停止など措置を受けていないことなど7つの条件を全て満たすものとしている。
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