再生可能エネルギーの出力変動を水素で解決、貯蔵した水素で「MIRAI」も走る:自然エネルギー(2/2 ページ)
不安定な再生可能エネルギーの出力をどう制御するかは大きな課題だ。九州大学が実施している「スマート燃料電池社会実証」では、こうした課題の解決策として再生可能エネルギーを水素として貯蔵する実証実験がスタートしている。さらに貯蔵した水素を燃料電池車に供給するなど、水素社会の実現に向けた先進的な取り組みだ。
この実証実験の2つ目の目的となるのが、ハイドロスプリングで製造・貯蔵された水素を燃料電池自動車に供給する水素ステーションの運用試験だ。九州大学 伊都キャンパス内に設置されている「九州大学水素ステーション」を利用する(図4)。ハイドロスプリングも同ステーション内の水素貯蔵システムに接続されている。
九州大学水素ステーションは、福岡県が燃料電池車の実証走行の場として、福岡〜北九州間に「水素ハイウェイ」を整備した際に併せて設置されたもので、2009年9月から稼働している。全国の大学で唯一水素ステーションを所有する九州大学は、2015年3月に公用車としてトヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を納入しており、CO2を排出しない“水素キャンパス”の実現を目指している(図5)。なお、公立大学が公用車として燃料電池車を利用するのは世界初だという。
九州大学が実施するスマート燃料電池社会実証では、この他にも伊都キャンパス内にある「次世代燃料電池産学連携センター」で固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実用化に向けた各種試験や、同キャンパス内の燃料電池システムと九州電力の系統電力を連携させる実証研究など先進的な取り組みを進めている。九州大学は水素研究の国際会議「水素先端世界フォーラム」開催会場でもあり、今後の水素や再生可能エネルギーといった次世代エネルギーの実用化に向けて大きな役割を担っている。
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