新電力のシェアが2014年度に5%を突破、中小規模の利用者で伸びる:電力供給サービス
小売全面自由化を前に、ようやく新電力のシェアが伸びてきた。すでに自由化が進んでいる企業向けの販売量のシェアが2014年度に5.24%まで上昇した。前年度から1ポイント以上も高くなり、増加ペースが加速している。特に中小規模の事業者が利用する「高圧」ではシェアが6%を超えた。
企業や自治体を対象にした電力の市場は2005年4月までに自由化したにもかかわらず、新電力(正式名称「特定規模電気事業者」)の販売量は伸び悩んでいた。8年目の2012年度でもわずか3.53%しかなく、2013年度から伸び始めて4.17%に、さらに2014年度に5.24%へ上昇して、ようやくシェアの拡大に弾みがついてきた(図1)。
電力小売で自由化の対象になっているのは、契約電力が2000kW(キロワット)以上の「特別高圧」と50kW以上の「高圧」の2部門である(図2)。特別高圧は大規模な工場やオフィスビルが利用する一方、高圧は中小規模の事業者や自治体が利用する。契約電力が50kW未満の「低圧」は家庭やコンビニエンスストアなどの商店が主な利用者で、2016年4月に自由化することが決まっている。
この中で2014年度に新電力のシェアが大きく伸びたのは「高圧」の市場だ。2013年度の4.45%から1.6ポイントも上昇して6.05%に拡大した。中小規模の事業者は電気料金の値上げによるコスト増加に悩み、安い新電力へ契約を切り替える事例が広がった結果である。加えて全国の自治体が公共施設や学校などの電力の調達を競争入札に切り替え始めた影響も大きい。
これまで新電力のシェアが伸び悩んだ最大の理由は、電力の流通量が少なかったことにある。発電事業者の大半が電力会社に供給していたからだが、最近は再生可能エネルギーを中心に発電設備が増加して、新電力でも販売する電力を確保しやすくなった。2016年4月から家庭向けを含めて全面自由化へ移行すると、電力の流通量がさらに増えて、新電力の販売量が拡大する。
一方で電力会社の販売電力量は減少傾向が続いている。2014年度は4月を除いて11カ月連続で前年を下回った(図3)。年間では3.0%の減少で、まだ自由化していない家庭向けの「電灯」は4.0%も減っている。節電の効果が着実に高まって、今後も需要は減少していく。2016年度から全面自由化で電力会社の販売量がさらに縮小して、新電力のシェアが一気に高まる可能性もある。
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