電気自動車にワイヤレスで電力が流れる、車体から車輪へ10センチの距離:電気自動車
次世代の電気自動車を構成する技術の1つに「インホイールモーター」がある。車輪の内部にモーターを搭載して、エネルギーの損失が少ない電気自動車を作ることができる。車体側のバッテリーから車輪側のモーターに電線をつないで電力を供給する方式が一般的だが、新たにワイヤレスの技術が実用化へ向かう。
鉄道用の電動機や自動車用のモーターなどを開発・製造する東洋電機製造が「ワイヤレスインホイールモーター」を開発した。電気自動車に搭載して高いエネルギー効率で走行を可能にする。世界で初めて走行試験にも成功した(図1)。
インホイールモーターは名前が示すように、車輪(ホイール)の内部にモーターを組み込んで直接駆動する方式だ。通常の電気自動車では車体に搭載したモーターからシャフトで車輪を駆動するためにエネルギーの損失が大きい。インホイールモーターは電力を効率的に使えることから、次世代の電気自動車に有効な技術とみなされている。
東洋電機製造が開発したワイヤレスインホイールモーターは、バッテリーに貯めた電力をワイヤレスで受け取る点が特徴だ。車体側と車輪側に「磁界共振方式」で電力を伝送する仕組みを実装した(図2)。
車体側のコイル(図2の中央、らせん状の記号)とコンデンサ(=で表す)を共振させると、車輪側のコイルとコンデンサも共振してワイヤレスで電力が伝わる仕組みだ。東洋電機製造が実装したワイヤレスインホイールモーターでは、車体側のコイルと車輪側のコイルを10センチメートル離した状態で電力を送ることができた。
同様にモーターを制御する信号も無線通信のBluetoothで送ることによって、車体と車輪のあいだを完全にワイヤレスにした。この方法で配線が不要になると、走行中の振動などによって断線するリスクがなくなり安全性が高まる。
東洋電機製造は市販の電気自動車にも搭載できるように、モーターに供給する電力の出力を高めていく計画だ。一方では道路などにコイルを埋め込んで走行中にワイヤレスで電力を供給する「走行中給電」の実証にも取り組む。走行中に給電が可能になると、電気自動車の航続距離が飛躍的に伸びる。
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