自然冷媒でも“冷えて省エネ”は可能か、環境省がコンビニで実証実験:法制度・規制
環境省は2015年6月1日から、フロン類を使用せず自然冷媒を使った冷凍冷蔵機器を利用して、従来通りの“冷え”と温室効果ガスの削減を両立できるかどうかを試す、実証実験を行う。
ショーケースや冷蔵庫、冷凍庫などで冷媒として用いられているフロン類は、地球を紫外線から守るオゾン層を破壊する物質として注目を集め1980年以降、オゾン層への影響度の高いクロロフルオロカーボン類(CFC)の国際的な規制が進んだ。代わりになる冷媒としては、オゾン層への影響度を抑えた代替フロンとしてHFCなどが開発され、現在まで数多くの冷凍・空調機器で利用されるようになっている。
しかし、代替フロンは、二酸化炭素(CO2)に比べて地球温暖化への影響度が数千倍高くなり、この排出抑制は気候変動(地球温暖化)対策の新たな柱として注目されている。日本でも2015年4月から「フロン排出抑制法」が施行されるなど、管理・抑制の動きは広がりを見せる(関連記事)。これらの動きを受け、最近ではスーパーやコンビニエンスストアのショーケースに、フロン類ではなく自然界に存在する物質を冷媒として利用する自然冷媒機器の利用が広がりを見せている。
今回の実証実験は、コンビニエンスストア2店舗において、この自然冷媒機器とショーケースへの扉設置を組み合わせることで、従来の冷凍・冷蔵機器のパフォーマンスを維持しつつ、温室効果ガス排出量がどれだけ削減できるかを調査するもの。加えて、扉の設置に対して懸念されている課題についても検証し、今後の普及方策を検討する(図1、図2)。
自然冷媒はフロン類を冷媒に使う時に比べて、冷やす能力が劣る場合が多いが、扉を設置することでこれを補い、十分な“冷え”を実現する。さらに、冷気をショーケースの外に逃がさない仕組みを取ることで、快適に買い物ができるだけでなく、省エネルギーにもつなげられる。
電力使用量削減データとともに店舗顧客や従業員にアンケートを実施
社会実験は2015年6月1日から、ローソンパナソニック前店(大阪府守口市)、ローソン豊橋明海工業団地店(愛知県豊橋市)の2店舗で実施。今後も実験店舗は拡大する予定だという。
調査は店内での意見や感想の収集とともに、電気使用量削減に関する効果を電力データにより検証する。また店舗顧客や従業員を対象としたアンケート調査なども予定している。
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