都市ガスだけでも、水素を混ぜても使える、低公害型ガスタービンの実証実験開始:蓄電・発電機器
川崎重工業(以下、川崎重工)は、同社明石工場で水素と都市ガスの混焼による低公害型ガスタービンの実証運転を開始する。
川崎重工の明石工場では3基のガスタービンで自家発電を行っているが、そのうち1基で水素と都市ガスの混焼による実証運転を行う。
駆動源となるのは、同クラスで最高レベルの発電効率となる、定格出力1700kW(キロワット)級ガスタービン「M1A-17D」だ。搭載されたドライローエミッション(DLE)燃焼器は、独自の「追焚き燃焼方式」を採用。追焚き燃焼方式は、パイロット(着火用)バーナとメインバーナから噴出される燃料に加えて、追焚きバーナから空気と燃料を投入することで、NOxの排出を抑制しながら安定的な燃焼を維持できる方式だ。これらのバーナーを切り替えることで燃焼温度を低く制御し、低NOx運転を実現する。
同方式は、水や蒸気を用いて燃焼温度を制御する方式に比べて、NOx排出量をより低く抑えられることが特徴だ。さらに、設備やシステムが簡素であることから低価格化も実現できるという。
追焚きバーナに「水素」を追加
川崎重工が今回行う実証運転は、この追焚きバーナに水素燃料系統を新しく追加することで、水素と都市ガス両方の使用を可能にしたものだ。投入する水素の割合は、体積当たり0〜約50%(熱量換算0〜約25%)の間で任意に変更することができ、都市ガス単独での運転も可能だ。また、水素混焼時におけるNOx排出量は25ppm以下(O2=15%換算)を実現するとしている。
水素混焼ガスタービンは、石油精製工場などから発生する未利用の副生水素を有効利用。都市ガス使用量を低減させることでCO2排出量の削減が可能だ。同実証運転では、NOx排出量や燃焼器温度、燃料供給系統を含めた水素混焼システムの運用安定性などを検証し、水素利用の有効性を確認する。
同社では2010年に、水素の製造、輸送・貯蔵および利用までの一貫したサプライチェーン「CO2フリー水素チェーン」構築に向けた取り組みを発表(関連記事)。さまざまなインフラ技術の開発や製品化に取り組んでいるところだ。今回の水素混焼ガスタービンもこの取り組みの一環となるもので、水素エネルギー普及の1つとしていく方針だという。
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