太陽光発電で全国1位に躍進、被災地に新たなエネルギーの芽生え:エネルギー列島2015年版(7)福島(3/3 ページ)
震災からの復興を推進する福島県で太陽光発電が急速に拡大している。沿岸部から山間部まで広大な土地にメガソーラーが続々と誕生して、災害に強い分散型の電力供給体制の整備が進んできた。農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングの取り組みも広がり始める。
ソーラーシェアリングが農業を変える
農地を利用した太陽光発電の取り組みも広がってきた。実際に農作物を栽培しながら太陽光発電を実施する「ソーラーシェアリング」と呼ぶ新しい農業のスタイルである。日本で初めて「脱原発都市」を宣言した南相馬市では、2012年から2014年にかけて「福島ソーラーシェアリング事業」を実施して効果を検証している。
広さが3000平方メートルの農地に、高さ2メートルの状態で500枚の太陽光パネルを並べた(図7)。畑の上にパイプを組んで架台を作り、南向きに30度の角度でパネルを設置した。太陽光のうち3分の1がパネルに当たり、残り3分の2が農地に届くように配置している。
発電能力は合計で100kWになり、発電した電力は全量を東北電力に売電した。この事業の成果報告によると、2013年6月〜2014年1月の8カ月間で発電効率は平均13.4%になり、太陽光発電の標準値(12〜13%)を上回っている。
パネルの下にはナス、カボチャ、大豆、シシトウ、ヒマワリなどを栽培した。農作物の種類によって生育状況に差は出たものの、通常の栽培方法と比べても十分に生育して収穫を得られることが実証できた。この成果をもとに農林水産省が中心になって、福島県内だけではなく全国各地にソーラーシェアリングの取り組みを広めていく方針だ。
農林水産省は2012年度から「地域還元型再生可能エネルギー早期モデル確立事業」を開始して、農山漁村の資源を生かした再生可能エネルギーの導入を支援している。その対象の1つに、いわき市の民間企業「とまとランドいわき」が選ばれて、市内の「アグリパークいわき」でソーラーシェアリングの取り組みを進めている。
イチゴを栽培する温室の周囲に、固定型と追尾型の2種類の太陽光発電システムを設置した(図8)。このうち追尾型の発電システムの下でイチジクの栽培から開始する。追尾型は支柱の上にパネルを設置する方式のため、地面にできる影の割合が少なくて済む。しかも太陽光の向きに合わせてパネル面が動き、発電量は固定式と比べて1.5倍にもなる。
固定型と追尾型を合わせると、発電能力はメガソーラーに近い970kWにのぼる。年間の発電量は135万kWhを見込んでいて、一般家庭で375世帯分に相当する。売電収入の一部は地元の農業高校の実習に生かすことになっている。ソーラーシェアリングで農業収入と売電収入を得る新しい手法に対する期待は大きい。
2012年7月に始まった固定価格買取制度を生かして、福島県の太陽光発電は一気に拡大した。これまでに認定を受けた太陽光発電設備は合計で400万kW(キロワット)を超えて、全国で堂々の第1位だ(図9)。風力なども合わせて認定設備がすべて運転を開始すると、福島県の全世帯が使用する電力の2倍に相当する供給量になる。2040年に自給率100%を達成する道筋は見えてきた。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北海道・東北 Part2−」をダウンロード
2016年版(7)福島:「太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押し」
2014年版(7)福島:「世界最高レベルの発電技術を太平洋に集結、脱・原子力のシンボルに」
2013年版(7)福島:「2040年にエネルギー自給率100%へ、太陽光を増やしてから風力を伸ばす」
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