木質バイオマスで電力と熱を作る、木材の乾燥やイチゴのハウス栽培も:自然エネルギー
高い山に囲まれた長野県の飯田市で木質バイオマスをガス化してから電力と熱を作るコージェネレーションシステムが運転を開始した。間伐材だけを燃料に使って、1日24時間の連続運転で360kWの電力を供給することができる。同時に排出する熱は間伐材の乾燥とイチゴのハウス栽培に利用する。
飯田市内にある娯楽施設の「かぶちゃん村」で6月2日にバイオマス発電が始まった(図1)。長野県内で15カ所の太陽光発電所を運営する「かぶちゃん電力」が初めて建設したバイオマス発電所である。
この発電所で注目すべき点は、国内の木質バイオマス発電では珍しいガスコージェネレーション(熱電併給)システムを導入したことにある。燃料の木質チップを高温の熱で分解してガスを発生させた後に、ガスエンジン発電機で電力を作り出す(図2)。
通常の木質バイオマス発電では蒸気タービンを回転させて発電するのと比べて、小型の設備で高い効率を発揮できることが特徴だ。バイオマス発電設備を専門に製造・販売するZEエナジーが林野庁から「木質バイオマス産業化促進事業」の補助金を受けて開発した。
かぶちゃん村が導入したシステムは発電能力が360kW(キロワット)で、発電効率(熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる割合)は25%以上になる。さらにガス化と発電に伴う排熱を再利用すると、最大で80%までエネルギーの変換効率を高めることができる(図3)。かぶちゃん村では燃料に使う間伐材の乾燥のほかに、近くのイチゴ園のハウス栽培にも熱を供給する。
発電所の運転時間は1日24時間で、年間に330日を予定している。最大出力の360kWを維持できれば、年間の発電量は285万kWh(キロワット時)になる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して800世帯分に相当する。かぶちゃん村では発電した電力を施設内で消費しながら、2016年10月からは固定価格買取制度を通じて売電することも計画している。
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