メガソーラーが50カ所以上で動き出す、風力は洋上へ、バイオマスは森林から:エネルギー列島2015年版(8)茨城(2/2 ページ)
首都圏に近い茨城県で再生可能エネルギーの導入が加速してきた。すでに運転を開始したメガソーラーは50カ所を超えて、太陽光発電の導入量は全国で第2位の規模になった。バイオマスは木質を中心に広がり、風力では全国の先頭を切って洋上のプロジェクトが大規模に始まる。
沖合に5MWの超大型風車20基を建設へ
茨城県の風力発電は太平洋側の南端に伸びる神栖市(かみすし)に集中している(図6)。海と川と湖に囲まれた細長い市の沿岸部を中心に、12カ所の風力発電所が運転中だ。合計すると50基以上の風車で100MWの発電能力になる。
この中で最も発電能力が大きいのは「ウィンド・パワーかみす第1・第2洋上風力発電所」である。臨海工業地帯の護岸に沿って15基の大型風車が洋上に並んでいる光景は圧巻だ(図7)。発電能力は合計で30MWになり、現在のところ国内の洋上風力発電では最大の規模を誇る。
さらに沖合では壮大なプロジェクトが進んでいる。同じ臨海工業地帯の護岸から沖合へ500〜1500メートルの広い海域で、茨城県が主導する洋上風力発電の計画がある。全体で680万平方メートルに及ぶ洋上に最大で100基の大型風車を設置する構想だ。1基あたりの発電能力が5MWの超大型機を採用する予定で、合計すると500MWに達する。世界でも有数の洋上風力発電所になる。
現時点では20基を建設する計画が具体的に決まっている(図8)。かみす第1・第2洋上風力発電所を運営するウィンド・パワー・グループを中核に、ソフトバンクグループのSBエナジーとオリックスを加えた3社の共同事業で実施する。
発電能力は20基の合計で100MWになる。年間の発電量は2億4500万kWhを想定していて、一般家庭で6万8000世帯分にのぼる。神栖市の総世帯数(3万8000世帯)を大幅に上回る供給力を発揮する見通しだ。ただし建設工事を開始する前に環境影響評価の手続きが必要になるため、今のところ運転開始の時期は決まっていない。
茨城県内では北部の山岳地帯と南部の沿岸地帯が風況に恵まれている(図9)。洋上では南部の神栖市の沖合が最も条件が良くて、年間の平均風速は毎秒8メートルに達する。毎秒8メートルの平均風速では設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は40%になり、陸上の風力発電と比べると2倍の発電効率を見込むことができる。
洋上風力は周辺の漁業や動植物の生息などに影響を及ぼさなければ、国土の狭い日本では有効な再生可能エネルギーの活用方法になる。茨城県が洋上風力の先進地域として果たす役割は大きい。
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2016年版(8)茨城:「バイオマス発電で全国1位、太陽光と風力の勢いも衰えず」
2014年版(8)茨城:「太陽光発電で全国2位、メガソーラーが港や湖から線路沿いまで広がる」
2013年版(8)茨城:「洋上風力発電が広がる臨海工業地帯、農山村には太陽光とバイオマス」
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