風車の中心に丸い大きなドーム、風力発電の効率が3%高くなる:蓄電・発電機器
米GEの研究グループがユニークな風力発電機を開発して、カリフォルニア州で実証実験を始めた。風車の中心部に丸いアルミ製のドームを装着することで、風力エネルギーを電力に変える効率が3%向上する見通しだ。実証実験では1.7MWの風力発電機に直径18メートルのドームを装着した。
再生可能エネルギーの中で太陽光と風力はエネルギーの変換効率が低い。太陽光は10〜20%、風力は20〜40%程度にとどまる。天候によって出力が変動するためだが、風力の場合は風車に当たる風のエネルギーの多くを逃していることが問題点の1つだ。米GEの研究グループは風車の中心に丸いドームを付ける方法で発電効率の改善に取り組んでいる(図1)。
米国カリフォルニア州の南東部にあるTehachapi(テハチャピ)市で稼働している風力発電所が実証実験の場所である。数多くある風車の1つに、UFOのような形をした丸い大きなドームが付いている(図2)。米GE(ゼネラルエレクトリック)の研究グループが開発した「ecoROTR」と呼ぶ風力発電の新しい仕組みだ。
ドームの直径は18メートルあって、発電能力が1.7MW(メガワット)のGE製の風力発電機の中心部に装着した(図3)。ドームはアルミで作られていて重さは9トンある。ただし大型の風力発電機は総重量が100トンを超えるため、重量が増える影響はほとんどない。
GEの研究グループが風車にドームを付けた理由は、従来の羽根だけで風を受ける方法では中心部に当たる風のエネルギーを生かせないことにあった。風洞実験などによって、中心部にドームを装着することでエネルギーの変換効率を3%高められることがわかり、実機を使って効果を検証することにした。5月から実証実験を開始して、9月まで続ける予定だ。
ドームのほかに風車を支えるタワーにも新しい構造を取り入れている。一般的な鉄製の長い管ではなくて、金属を格子状に組んでポリエステルでカバーした。この構造にするとタワーを現地で組み立てることができるため、従来はタワーの運搬が難しくて設置できなかった場所にも風力発電所を建設することが可能になる。
風力発電機は回転する羽根を長くすることで発電能力を高めてきたが、羽根が長くなるほど環境に対する影響も大きくなる。GEの研究グループが開発したドーム型の風力発電機はエネルギーの変換効率を向上させる効果に加えて、風車の中心部で回転する発電機そのものを大きくして性能を高めることも可能になる。ドーム付きの風車が次世代の風力発電の主流になるかもしれない。
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