人口500人強の離島に500個の鉛蓄電池、再生可能エネルギーが増えても大丈夫:蓄電・発電機器
沖縄県の波照間島で再生可能エネルギーを増やす取り組みが着々と進んでいる。日本で初めて可倒式の風力発電設備を導入した離島では、天候による出力変動の影響を吸収するために蓄電池システムを新たに導入した。合計で500個の鉛蓄電池が充電・放電することで島内の電力を安定に保つ。
波照間島(はてるまじま)は沖縄本島から南西に400キロメートル以上も離れた日本で最南端の離島だ(図1)。面積が13平方キロメートルの小さな島に、5月末現在で276世帯の524人が暮らしている。
島の主力の電力源は石油を燃料に利用するディーゼル式の火力発電機で、4基で最大950kW(キロワット)の電力を供給することができる。加えて2009年に日本で初めて可倒式の風力発電設備を導入して、2基で最大490kWの発電能力がある(図2)。台風による強風の恐れがある沖縄の離島でも安全に風力発電を実施することができる。
ただし島内の供給力の3割以上を風力発電が占める可能性があるために、天候による出力の変動が電力の供給状態を不安定にしてしまう懸念がある(図3)。可倒式の風力発電設備と合わせて電力を安定化する装置を導入したのに続いて、新たに鉛蓄電池を使って対策を強化した。
鉛蓄電池は自動車用のバッテリーなどに多く使われているもので、コストが安くて容量が大きい点が特徴だ。波照間島では合計500個の鉛蓄電池を導入した(図4)。蓄電容量は1500kWh(キロワット時)で、一般家庭の1日あたりの使用量(10kWh)に換算して150世帯分に相当する。可倒式の風力発電設備が最大の出力を続けても、約3時間にわたって充電できるだけの容量がある。
沖縄県をはじめ日本の離島の電力源は小規模なディーゼル発電機を使うことが多く、燃料は石油に依存している。太陽光や風力に恵まれた自然環境を生かして再生可能エネルギーを導入するためには、天候による出力変動の対策が不可欠になる。波照間島のように風力発電の比率が大きい離島で有効な対策を実証できれば、ほかの離島にも展開できる可能性が開ける。
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