森林に優しいメガソーラーを、市街地ではバイオガス発電:エネルギー列島2015年版(9)栃木(2/2 ページ)
高原が広がる栃木県の北部で大規模なメガソーラーの建設計画が相次いで始まり、太陽光発電の導入量が急速に伸びている。周辺の森林と調和を図る設計を取り入れながら、環境負荷の低い太陽光発電を増やしていく。都市部では下水処理場のバイオガス発電設備が続々と運転を開始する。
県内12カ所で小水力発電の導入が決まる
小水力発電では県庁の地球温暖化対策課が推進する「河川活用発電サポート事業」が動き出す。急峻な川が流れる北西部の日光市と鹿沼市を中心に、小水力発電に適した15カ所を選定して発電事業者を公募した結果、12カ所で導入が決まった(図6)。年間の想定発電量を合計すると2400万kWhになり、一般家庭で6700世帯分の電力を供給することができる。
この事業では発電所の建設に必要な許認可の手続きを県がサポートするほか、地元の理解を得るための協議の場を設置してプロジェクトを促進していく。小水力発電の先行事例を数多く作り出すことで、県内の各地域に再生可能エネルギーを拡大して活性化につなげる狙いだ。
栃木県では県営ダムを利用した小水力発電も全国に先がけて取り組んできた。ダムから下流に放流し続ける「維持流量」を使って発電する。発電所の建設資金から設計・施工、運転開始後の維持管理まで含めて、すべて民間企業に委託する「ESCO(Energy Service Company)」と呼ぶ運営方式を採用している。
県内に15カ所ある県営ダムのうち、これまでに2カ所で導入した実績がある。那須塩原市にある「塩原ダム」が2カ所目で、2015年3月に発電を開始した(図7)。発電能力は195kWになり、年間の発電量は114万kWhを想定している。今後も同じESCO方式で県営ダムに小水力発電設備を導入していく。
山間部を中心に小水力発電が拡大するのと並行して、市街地では下水を利用したバイオマス発電の導入が相次いで始まっている。栃木県内の7つの地域にある下水道の浄化センターのうち6カ所で発電事業を実施する計画だ(図8)。
いずれも下水を処理する過程で発生するバイオガスを使って発電する(図9)。県の北部をカバーする「北那須浄化センター」が最も新しく、2015年5月に運転を開始したところだ。発電能力が25kWのガスエンジン発電機8台を導入して、年間に140万kWhの発電量を見込んでいる。一般家庭で400世帯分の使用量に相当する。
発電した電力を固定価格買取制度で売電することによって、年間の売電収入は約5500万円になる見通しだ。発電設備の導入に4億5000万円かかったが、買取期間の20年間の収益を通じて浄化センターの維持管理費を年間に1800万円も削減することができる。再生可能エネルギーの導入が自治体のコスト削減に効果を発揮する。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関東・甲信越 Part1−」をダウンロード
2016年版(9)栃木:「小水力発電とメガソーラーが農山村を変える、下水バイオガス発電も活発」
2014年版(9)栃木:「大きなダムから小さな川まで、水力発電の適地は逃さない」
2013年版(9)栃木:「日本の真ん中で急増するメガソーラー、木質から汚泥までバイオマスも多彩」
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