「藻」のチカラで下水を浄化、さらにバイオ燃料も生成できる新技術:自然エネルギー(2/2 ページ)
東北大学と筑波大学は、藻類が生成する炭化水素を輸送用のバイオ燃料に変換する新手法を開発した。震災の被害を受けた東北地方の復興プロジェクトとして行われている藻類を活用して都市下水を浄化し、同時にバイオ燃料の生成する次世代技術開発の一環として開発されたもので、バイオ燃料の実用化への貢献が期待される。
下水で生産したスクアレンをどう改質するか?
スクアレンは深海に生息するサメの肝油などからも採取できる。スクアレンは不飽和炭化水素でありこのままでは酸化しやすいため、化学的に水素を添加して安定化させたスクアランが化粧品などに利用されている。しかし下水で培養したオーランチオキトリウムが生成するスクアレンは用途が限られており、需要の大きいガソリンやジェット燃料に変換するには改質が必要になる。そこで東北大学と筑波大学はその改質を可能にする新たな触媒技術を開発した。
この手法では活性金属であるルテニウムを酸化セリウムに担持した触媒を利用する。この触媒を用いてスクアレンの水素化物であるスクアランを、240℃、60気圧水素で水素化分解し、低級炭化水素を得る。この反応では毒性のある芳香族を一切生成せず、スクアラン分子中の分岐と分岐の中間位置が選択的に切断され、分岐を残した飽和炭化水素のみが得られたという(図3)。分岐を残した飽和炭化水素は、オクタン価、低凝固点、保存安定性の観点からガソリンやジェット燃料などに適している。
この触媒技術は既存の石油改質手法に比べて生成物組成が単純であり、触媒安定性も優れといったメリットもある。「この手法は直鎖成分が大部分を占める原油と異なり、分岐が多いという藻類由来炭化水素の特徴を生かした改質手法といえる」(東北大学)。
この改質手法は、スクアレンの大規模生産に向けてその利便性を拡張し、実用化を加速させるものとして期待される。東北大学と筑波大学は今後この手法を、実際に生産された藻類由来のオイル試料への適用や、スクアレンと並び藻類が生成する代表的な炭化水素の1つであるボトリオコッセンなどへの応用にも取り組むとしている。
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