ニュース
農家の水不足を救ったダムが山間地域を停電から救う、出力197kWの小水力発電所完成:自然エネルギー
鳥取県が2012年から建設を進めていた小水力発電所「下蚊屋発電所」が完成し、2015年7月3日から売電を開始する。同発電所により売電収入を獲得する他、災害時には山間地域の無停電に貢献する。
今回新たに小水力発電所を建設する下蚊屋ダムは、農業用水確保のため江府町下蚊屋地区の日野川水系俣野川に農水省が建設したもの。ナシや白ネギなどの農家が多くあるものの水不足に悩むケースの多かった鳥取県大山地区に対し、同ダムから300〜900ミリメートルのパイプを40.2キロメートル通し、水を送り込んでいる。下蚊屋ダムの大きさは、長さが210メートル、高さが55メートルで、貯水量は386万トンある。
多くの農家を救ったこの下蚊屋ダムだが、今度はこの水を使い、エネルギー面でも地域を救うことになる。それが同ダムに建設された小水力発電所「下蚊屋(さがりかや)発電所」だ。落差50メートルの水流を利用して発電能力は197kWになる(図1)。年間の発電量は150万kWh(キロワット時)を想定している。
新設された発電所は、鳥取県の「再生可能エネルギーによる災害時集落無停電サービス」のモデル事業の一環として建設されたもので、同発電所を中心に鳥取県江府町の助沢地区、下蚊屋地区において災害などによる停電発生時でも電力系統の完全復旧までに必要最小限の電力供給を行う「災害時無停電システム」を構築する(図2)。
同発電所の運営は大山山麓地区土地改良区連合が行う。通常時は同発電所の電力は中国電力に売電し、得られる売電収入は、大山山麓地区土地改良区連合が管理する土地改良施設の維持管理費に充てるという(図3)。
関連記事
- 小水力発電の3つの課題−水利権、採算性、維持管理−
日本中に流れる川の水を有効に利用すれば、小水力発電の規模を飛躍的に拡大することができる。実際に各地域の自治体が導入プロジェクトを進めているが、期待ほどには設置件数が増えていない。維持管理に手間がかかるほか、天候によって水量が変動して採算性を見込みにくい点が課題だ。 - 中国山地から広がる小水力発電、日本海には巨大な太陽光と洋上風力
有名な砂丘をはじめ美しい海岸線が続く鳥取県には、火力発電所も原子力発電所もない。電力源の中心は水力だ。中国山地から日本海へ向かう川の流れを生かして、小水力発電が広がる。沿岸部ではメガソーラーや洋上風力の建設計画が始まって、再生可能エネルギーの導入量を押し上げていく。 - 小水力発電で全国1位をキープ、農業用水路や砂防ダムでも水車を回す
2050年までに再生可能エネルギーを900MWまで拡大する計画の長野県では、太陽光・小水力・バイオマスの3本立てで導入量を増やしていく。特に小水力発電は全国1位の導入量を誇り、2050年には発電量で太陽光を上回る見込みだ。国や県、村と民間企業も連携して水力資源の活用に取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.