地域通貨による「日本初」のデマンドレスポンス、「ハイチュウ」工場跡のスマートシティで:スマートシティ
兵庫県尼崎市のJR塚口駅前の再開発プロジェクト「ZUTTOCITY」では、街区全体の電力受給状況の「見える化」を行うとともに、尼崎市における地域通貨ポイントを導入することで地域の商店と連携したデマンドレスポンスに取り組む。
JR宝塚線「塚口」駅前に広がる総面積8.4ヘクタールの土地。ここはかつて森永製菓塚口工場だった土地だ。同工場は、1921年に完成しそれ以来90年以上にわたって操業し、ソフトキャンデー「ハイチュウ」などさまざまなお菓子を生産してきた。しかし施設の老朽化により、2013年に閉鎖された。今、その土地はJR塚口駅前の再開発プロジェクト「ZUTTOCITY」として、最先端のスマートコミュニティへと生まれ変わろうとしている。
同プロジェクトはJRの駅前再開発としては過去最大規模のもので、1200戸の分譲マンションや71戸の戸建をはじめ、駅ビル、商業施設、大型公園などが新設される。野村不動産、ジェイアール西日本不動産開発、長谷工コーポレーションの3社が手掛けている。同プロジェクトは関西最大級となる規模とともに、25%が緑地である点など自然豊かな開発計画である点が注目を集めているが、省エネと地域活性化を組み合わせたさまざまな取り組みを行っていることが特徴となる。
同プロジェクトでは2016年度から3年間、電力の「見える化」を実施する。三菱電機のスマート制御クラウドサービス「DIAPLANET」を活用し、同サービス上に構築するタウンEMS(エネルギーマネジメントシステム)を実現。街区全体の電気の需給状態をデジタルサイネージでリアルタイムに表示できる。タウンEMSは街区全体のエネルギー消費量を「見える化」し、地域全体の省エネにつなげるだけでなく、夏冬のピーク時のデマンドレスポンス要請などにも活用可能だとしている。
地域通貨と連携したデマンドレスポンス
さらに、まいぷれwithYOU、関西電力と共同で、尼崎市域における地域通貨「ZUTTO・ECOまいポ」と連携したデマンドレスポンスを実施する。具体的には、尼崎市全域において、地域通貨ポイント「ZUTTO・ECOまいポ(まいぷれポイント)」を導入し、夏冬の電力需要がピークとなる時間帯に電力需要を下げるため、地元の商店や駅ビルなどに外出した場合、通常時の2倍のポイントを付与することで、デマンドレスポンスを進める。加えて、地域通貨ポイントの有効活用を行い、地域の活性化を図る。地域通貨ポイントを連携させたデマンドレスポンスにより、特定の自治体全域にまたがる省エネ・地域活性化の取り組みを行うのは「日本初」(尼崎市)という(図2)。
これらの取り組みは、2015年度尼崎市が進める「尼崎版スマートコミュニティ」に認定され、今後、尼崎市の補助を受けて事業を推進していくという(図3)。
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