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2030年度の買取費用は4兆円に、発電コストが下がれば導入量を増やせる再生可能エネルギーの普及を阻む壁(3)(2/2 ページ)

再生可能エネルギーの導入量が拡大すると、固定価格買取制度の買取費用も増えていく。政府の試算では2030年度に4兆円にのぼる買取費用を国民全体で負担しなくてはならない。日本の発電コストは海外と比べて2倍の水準で、太陽光を中心にコストを下げることが買取費用の低減につながる。

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太陽光は2030年に発電コスト7円へ

 日本の太陽光発電システムの導入費用を欧米の先進国と比べると約2倍の高さになる(図5)。費用の半分以上を太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの装置が占めている。欧米並みに市場が拡大していけば装置の価格は下がる。さらに太陽光パネルの発電効率も向上して、1kWあたりの単価はいっそう低下していく。


図5 太陽光発電システムの導入費用の国際比較。出典:資源エネルギー庁(Bloomberg New Energy Financeのデータをもとに作成)

 太陽光発電のコストを低減する取り組みはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に、メーカーや大学・研究機関を加えて中長期の技術開発プロジェクトが進んでいる。目標は2020年までに発電コストを電力1kWh(キロワット時)あたり14円に、2030年には火力や原子力よりも低い7円まで下げることだ(図6)。そうなれば買取価格を10円台に引き下げても発電事業者は利益を出せる。


図6 太陽光発電コストの低減目標と実現シナリオ(非住宅用)。出典:NEDO

 資源エネルギー庁が太陽光発電を実施中の事業者を対象に調査したところ、太陽光パネルの購入価格は毎年度の買取価格と連動する形で下落する傾向が見られた。市場規模と買取価格が太陽光パネルの実売価格を決める大きな要因になっている。技術の進化と合わせて発電コストの削減は十分に可能だ。

 風力発電でもコスト削減の余地は大きい。陸上風力の導入費用(資本費)を海外の主要国と比較すると、太陽光と同様に2倍の水準になっている(図7)。今後は市場の拡大による発電機の価格低下に加えて、風車1基あたりの発電規模が大きくなるため、導入費用の単価は下がっていく。こうした傾向は水力や地熱にも当てはまる。


図7 陸上風力発電にかかる費用の国際比較。MW:メガワット(=1000kW)。出典:資源エネルギー庁(OECDのデータをもとに作成)

 再生可能エネルギーの中でバイオマスだけは例外で、燃料費がかかる。木質バイオマス発電では原価の7割近くを燃料費が占める(図8)。燃料になる木質チップの製造コストの大半は加工や運搬にかかるため、削減できる余地は小さい。地域の森林資源を利用することから、規模の拡大によるコストの低減効果も見込みにくい。


図8 木質バイオマス発電の原価構成。出典:資源エネルギー庁

 バイオマスに関しては木質以外にも下水の汚泥や廃棄物などを燃料に利用することができる。海外からパームヤシ殻などを輸入する方法もある。国内と海外の資源を有効に使いながら、発電コストは高くても出力の安定した電源として限定的に増やしていく方向が望ましい。

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