EVの“使用済み”バッテリーがドル箱へ、再生エネの導入拡大が後押しか:電気自動車(3/3 ページ)
電気自動車(EV)の普及拡大に伴い、使用済みバッテリーの処理方法は1つの課題だ。EVに注力する自動車メーカーはこうした使用済みバッテリーを、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い需要が増している蓄電システムに再利用する取り組みを進めている。
EV世界シェアトップ日産、バッテリーの再利用でも提携戦略
日産はルノーとのアライアンスにより、リーフのグローバル展開に注力している。日産の発表によれば、2010年10月以降の発売以降、リーフの世界累計販売台数は2014年11月時点で14万8700台を突破。現在も世界のEV市場におけるシェアはリーフがトップだ。最近では商用車向けのEV「e-NV200」も市場投入するなど引き続きEV事業に注力している。
このように世界で多くのEVを販売する日産は、使用済みバッテリーの活用および事業化についても積極的な取り組みを見せている。同社はリーフの使用済みバッテリーを再利用した事業の展開を目的に、2010年に住友商事と合弁会社フォーアールエナジーを設立。このフォーアールエナジーを中心にさまざまな取り組みを進めている。
2014年には大阪湾の埋立地で稼働中のメガソーラーに併設した大型の蓄電システムに、リーフ16台分の使用済みバッテリーを利用(図4)。これは環境省による「再生可能エネルギー導入のための蓄電池制御等実証モデル事業」の認定を受けたものだ。EVの使用済みバッテリーを利用した大型蓄電システムの実用化は当時世界初の試みとなる(関連記事)。
2015年からは日産、フォーアールエナジー、エナリスと実証プロジェクトも開始している。このプロジェクトではリーフ24台分の使用済み蓄電池を日産先進技術開発センターに設置し、電力ピークカット、デマンドレスポンス、インバランス削減への活用を目指している(関連記事)。
国内と並行して、海外でも積極的な取り組みを進めている。2012年には北米日産が、米国住友商事、フォーアールエナジー、スイスの電力大手ABBとパートナーシップ契約を締結。再生可能エネルギーの導入が進む北米で、リーフの使用済みバッテリーを活用した蓄電システムの事業化を共同検討することで合意している。この他にも2015年6月に、企業向けに蓄電池ソリューションを提供している米国のGreenChargeNetworksとの提携を発表。こちらも使用済みバッテリーを再利用した蓄電システムの展開が目的だ。
世界的な再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、今後も国内外で電力網の安定化に向けた蓄電池需要は拡大すると見られる。現時点では実証段階のものが多いが、こうした需要拡大は日産や三菱が取り組む使用済みバッテリーを活用した蓄電システム事業の追い風となるかもしれない。
なおトヨタは2013年に「プリウス」から回収したニッケル水素バッテリーを利用する定置型蓄電池を発売してる(関連記事)。定置型蓄電池であれば車重が航続距離に影響するEVやHVのように重量への制約を考慮する必要が少ない。この特徴を生かしてプリウスから取り出したバッテリーを箱の中に詰めて定置型蓄電池としている。
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