世界最大の浮体式による洋上風力発電設備、福島沖で係留作業が始まる:自然エネルギー
福島県の沖合20キロメートルの距離にある海域で、世界最大級の洋上風力発電設備の係留作業が始まった。当初の予定から17日間の遅れで現地に到着したが、9月中に海底送電ケーブルの敷設まで完了する見込みだ。その後に試運転に入って、順調に行けば年末から年始に実証運転を開始する。
海面から最高到達点まで188メートルもある世界最大の浮体式による洋上風力発電設備「ふくしま新風」が、7月29日の早朝5時に沖合20キロメートルの実証海域に到着した。福島県の小名浜港を前日の夕方17時に出発して、12時間かけて曳航作業を無事に終えた(図1)。
現地では早速29日から風力発電設備の係留作業が始まっている。ふくしま新風の浮体部分を上空から見ると、2本の構造物を直角に組み合わせた形で造られている(図2)。この直角のところに巨大な風車を備えた高さ105メートルのタワーが建っている。
洋上に浮かぶ巨大な風力発電設備を安定させるために、8本の係留チェーンを浮体部分に装着して、チェーンの先端に付いているアンカーを海底に下ろす必要がある。係留作業は3週間後の8月19日に完了する予定になっている。
係留作業の次は海底ケーブルの敷設作業に入る。すでに実証プロジェクトの第1期で2MW(メガワット)の洋上風力発電設備「ふくしま未来」と、変電設備のサブステーション「ふくしま絆」が2013年11月から運転を続けている。発電能力が7MWのふくしま新風は、2MWのふくしま未来の南側に設置して、ふくしま絆まで海底送電ケーブルで接続する(図3)。
ケーブルの敷設・埋設作業には42日間かかって、9月30日に完了する見込みである。変電設備があるサブステーションから陸上にある東京電力の「広野火力発電所」までは海底ケーブルで接続済みだ(図4)。10月に入ると新設のふくしま新風が試運転を開始して、発電した電力をサブステーション経由で陸上まで送電できるようになる。
試運転の期間は2カ月程度を予定している。今後の作業が順調に進めば、12月下旬から1月上旬にかけて実証運転へ移行する。海に浮かぶ超大型の洋上風力発電設備が実際にどのくらいの電力を供給できるのか、国内はもとより世界各国の注目が集まる。
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