家庭向けの接続料金は7〜8円台に、電力会社10社が国に認可を申請:法制度・規制
2016年4月に小売全面自由化が始まると、小売電気事業者は電力会社の送配電部門に接続料金を払って家庭に電力を供給することができる。接続料金は国の認可が必要で、電力会社10社が新料金の認可を一斉に申請した。北陸電力の単価が最も安く、東京電力と九州電力が2番目に安い。
これまで企業向けでは新電力が電力会社に接続料金を払って、送配電ネットワークを利用することができた。2016年4月からは電力会社の小売事業部門を含めて、すべての小売電気事業者が電力会社の送配電部門(送配電事業者)に同じ条件で接続料金を払うことになる(図1)。接続料金は送配電を委託する費用であることから「託送料金」とも呼ぶ。
電力会社10社は7月31日までに新しい託送料金を国に申請した。家庭や商店向けの低圧の託送料金に加えて、企業や自治体向けの高圧・特別高圧の託送料金も改定する。低圧の標準料金を地域別に見ると、基本料金と電力量料金のバランスが違っているために単純な比較はできないものの、従来の電気料金と同様に北陸電力が最も安い。
毎月の使用量で決まる電力量料金の単価では北陸電力が1kWh(キロワット時)あたり7.16円で、東京電力と九州電力が7.37円で続く(図2)。東京電力は現時点で家庭向けに販売している電気料金は高くて、北海道電力に次ぐ水準だが、託送料金は意外にも安い。送配電に必要な原価の配分によるもので、小売電気事業者にとっては料金競争の余地が大きくなる。
このほかに関西電力を加えた4社が家庭向けの託送料金の単価を7円台で申請した。残る6社のうち離島が多い沖縄電力は料金体系が異なるため除外すると、北海道・東北・中部・中国・四国の5社が8円台になっている。特に東北電力の単価は8.82円で、東京電力と比べて約2割も高い。
一方で企業向けの高圧の託送料金は地域による差がさほど大きくない。沖縄を除くと9地域の単価は2.27〜2.68円の範囲に収まっている。企業向けでも北陸が最も安く、2番目は東京だ。家庭向けと同様に東北が最も高い。こうして見ると、託送料金が高めの東北や中国では自由化後も料金競争は起こりにくい可能性がある。
各社が申請した託送料金は今後2段階のステップを踏んで正式に決まる。小売全面自由化に伴って政府は「電力取引監視等委員会」を新設して、委員会の意見をもとに各電力会社の託送料金を認可することになっている(図3)。新しい託送料金は2015年12月末までに認可を受けて確定する見通しだ。
これまでの電気料金の認可の状況から考えると、各社が申請した託送料金は最大でも1割程度の減額にとどまる可能性が大きい。小売電気事業者は現時点の申請額をベースに、2016年4月から提供する電気料金を検討する必要がある。
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