植物工場で1日にレタス3万株、LED照明+水リサイクル+栽培自動化:スマートアグリ
LED照明による完全人工光型の植物工場でレタスを生産・販売する京都府のベンチャー企業が第2弾の植物工場を同じ京都府内に建設する。各分野の有力企業4社とコンソーシアムを組んで、栽培工程の自動化と水のリサイクルにも挑む。新工場では2017年の夏からレタスの出荷を開始する予定だ。
京都府で2006年に創業したベンチャー企業のスプレッドは、2007年に第1弾の植物工場を亀岡市に建設してレタスの生産を開始した(図1)。LED照明を使った完全人工光型の植物工場から、1日に2万1000株のレタスを首都圏と関西圏の食品スーパーに出荷している。
新たに京都府内の木津川市にある「けいはんな学研都市」の中に、第2弾の植物工場を建設する(図2)。同様にLED照明を使って1日あたり3万株のレタスを生産する計画で、育苗から収穫までの工程を完全に自動化する点が特徴だ。レタスの栽培に欠かせない水資源を98%リサイクルできるようにして環境性能も引き上げる。
2016年の春に着工して、2017年の夏にはレタスの出荷を開始する予定だ。新工場には専用のLED照明と独自開発の空調システムを導入して省エネにも取り組む。亀岡市で運営中の工場と比べると、レタス1株あたりのエネルギー消費量を30%減らすことができる(図3)。
スプレッドは新工場を建設するにあたって4社とコンソーシアムを組むことにした(図4)。植物工場の建設と制御技術は大林組、栽培の自動化設備は椿本チエイン、水のリサイクル設備は東レが担当する。さらに情報通信技術(ICT)を駆使した工場全体の管理システムを早稲田大学発のベンチャー企業が開発する体制だ。
コンソーシアムの総合力を生かして新工場を完成させた後には、同様の技術を使って植物工場のフランチャイズ展開を目指す。スプレッドと大林組が共同で植物工場のフランチャイズを拡大して、2020年をめどに1日あたり50万株のレタスを生産・販売できる体制を作り上げる。
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