地熱開発の補助金が37地域に広がる、温泉井戸の掘削も対象に:自然エネルギー
28億円の国家予算を投入する地熱資源開発の補助金の交付対象に新たに9つの地域が決まった。すでに第1次の公募で確定している28地域と合わせて、全国37カ所で開発プロジェクトが進む。第3次の公募も8月3日に始まり、地熱発電所の影響を調査するための温泉井戸の掘削が対象に加わった。
政府が2013年度から続けている「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」は毎年度に3回の公募を通じて交付対象を選定する。2015年度は第1次で28件を選び、さらに7月31日に第2次で9件を追加した。北海道が2件、東北が3件、関東が1件、九州が3件だ(図1)。
地域によって地熱開発のフェーズが分かれるが、2015年度の交付対象には農業と連携するプロジェクトが増えている。新たに選ばれた9地域の中では、北海道の摩周湖に近い弟子屈町(てしかがちょう)で地熱発電と熱水を利用したハウス栽培の可能性を調査する予定だ。
ユニークな取り組みとしては、福島県の会津地方にある柳津町(やないづまち)でトラフグの養殖に地熱を活用する。柳津町には東北電力の「柳津西山地熱発電所」が1995年から稼働している(図2)。1基の地熱発電設備では国内最大の6万5000kW(キロワット)の発電能力があり、発電に利用した後の熱水を地域の養殖事業や園芸作物の栽培に生かしていく。
火山地帯を中心に日本には世界で第3位の資源量を誇る地熱が存在するが、環境保護の問題に加えて温泉に対する影響を懸念する声が根強くある。地熱発電のために大量の蒸気と熱水を地下から噴出させることによって、温泉事業者が所有する源泉の枯渇につながる可能性があるためだ。
新たに地熱発電所を建設するうえで、温泉事業者をはじめ地域の理解を得ることは不可欠である。そこで政府は補助金の対象に温泉井戸の掘削調査を追加することにした。発電能力が5000kW以上の地熱発電所を建設する地域が対象になる。温泉の湧出量が過度に減少した場合に、追加で井戸を掘削して調査を実施することができる。
8月3日に開始した第3次公募から、「温泉影響調査」が対象に加わった(図3)。従来から対象になっている熱水を利用した施設の導入などを補助する「ハード支援」、地域の住民を対象にした講習会や見学会などを補助する「ソフト支援」と合わせて3種類になる。
第3次公募は8月31日(月)の正午まで受け付ける。補助金は対象事業の経費に対して100%を交付する。1件あたりの補助額は最高が1億8000万円まで、最低でも100万円である。
関連記事
- 地熱開発の補助金が全国28地域に、発電したら農業にも生かす
日本の貴重なエネルギー資源である地熱の開発プロジェクトが全国で活発になってきた。北海道から鹿児島まで28地域を対象に、政府の補助金を交付することが決まった。発電した後の蒸気や熱水を有効に利用することがテーマの1つで、ハウス栽培に地熱を生かす取り組みが各地に広がる。 - 住民26人が立ち上げた地熱発電所、熊本の温泉郷で商用運転を開始
地熱資源が豊富な熊本県の「わいた温泉郷」に、高温の蒸気を利用した本格的な地熱発電所が運転を開始した。発電能力は2MWで、年間に3400世帯分の電力を供給できる見込みだ。地元の住民26人が地域の活性化を目指して取り組む。国の補助金を受けて、周辺地域に熱も供給する。 - 全国に広がる地熱発電の開発計画、北海道から九州まで39カ所
地熱発電は国内の再生可能エネルギーの中で開発余地が最も大きく残っている。これまでは発電所の建設に対する規制が厳しかったが、徐々に緩和されて開発計画が増えてきた。現時点で調査・開発段階にある地熱発電のプロジェクトは全国で39カ所に広がっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.