洋上風力と潮流発電に日本海で挑む、内陸には雪と太陽光と水力発電:エネルギー列島2015年版(17)新潟(3/3 ページ)
日本海に眠る豊富な資源が新潟県のエネルギー戦略を勢いづける。北部の沖合に44基の大型風車を展開する計画が動き始め、実現すれば国内最大の風力発電所になる。20キロメートル離れた島では潮の流れを利用した実証試験も進む。一方で雪が降る内陸部は太陽光と水力発電の導入が活発だ。
メガソーラーの上に雪は積もらず
未来に向けたプロジェクトが洋上で進む一方、身近な再生可能エネルギーの導入事例が県内の各地域に広がり始めている。新潟県では固定価格買取制度の認定を受けている発電設備の規模は全国の中でさほど大きくないものの、雪国ならではの取り組みが太陽光を中心に活発になってきた(図6)。
代表的な例が県営の「新潟東部太陽光発電所」である。内陸部の阿賀野市(あがのし)にある産業団地の中に残っていた50万平方メートルの用地に、合計で9万5000枚の太陽光パネルを設置した(図7)。発電能力は17MWに達して、年間の発電量は2240万kWhにのぼる。一般家庭で6200世帯分に相当する電力で、阿賀野市の総世帯数(1万3000世帯)の半分近くをカバーすることができる。
このメガソーラーは3段階に分けて建設した。最初の1号系列では太陽光パネルの設置角度を変えられるようにして夏は20度、冬は40度に傾けて雪が積もらないように工夫した。パネルから滑り落ちた雪が周辺に積もることを考慮して、パネルを設置する架台の高さは1.8メートルに引き上げた。
ただし設置角度を変える効果は見られなかったことから、次の2号系列と3号系列では南向き30度に固定した。架台の高さは同じ1.8メートルである。その結果、1号系列を上回る発電効率を発揮することがわかった。その後に建設した県営のメガソーラーでは設置角度を30度に固定する方式で統一している。
豪雪地帯が広がる新潟県には水量の多い川が多く流れていて、古くから水力発電にも取り組んできた。姫川(ひめかわ)は富山県の白馬岳を水源にして、長野県と新潟県を通って日本海まで流れ出る。
下流の糸魚川市(いといがわし)には、1934年から運転を続けている「姫川第六発電所」がある(図8)。電気化学工業と北陸電力の合弁会社である黒部川電力が運営する水力発電所の1つだ。発電能力が26MWもある大規模な水力発電所だが、それでも使いきれないほどの豊富な水量が川を流れてくる。
そこで隣接する場所に「新姫川第六発電所」を建設する計画が2014年12月に始まった(図9)。発電能力は27.5MWを予定していて、既設の第六発電所を上回る。新旧の発電所を合わせると現在の2倍強の電力を供給できるようになる。
小水力発電とは違って建設工事は大がかりだ。上流の取水口から約5キロメートルにわたって山中に導水路を敷設して、下流の発電所まで水を引き込む。現在は建設前の環境影響評価の段階にあり、問題がなければ3年後の2018年に着工する。工事には約4年かかる見込みで、運転開始は2022年4月を予定している。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関東・甲信越 Part3−」をダウンロード
2016年版(17)新潟:「都市と離島に眠るエネルギーを生かす、下水バイオガスから海流発電まで」
2014年版(17)新潟:「雪に負けず増え続けるメガソーラー、日本海の風力や波力も有望」
2013年版(17)新潟:「雪国で生まれる小水力とバイオマス、冬の太陽光は角度でとらえる」
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