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石炭をガス化する第2世代、LNG火力とともに複合発電へ火力発電の最新技術を学ぶ(3)(1/2 ページ)

2020年代に火力発電の中核になる技術が「複合発電」である。ガスタービンと蒸気タービンの2種類を組み合わせて発電効率を向上させる。石炭もガスに転換してから発電に利用する。現在はガスの燃焼温度が最高で1600度だが、2020年には1700度に引き上げて発電効率を60%に近づける。

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第2回:「第1世代の発電設備で効率を上げる、高温・高圧・高湿の限界まで」

 現在のところ商用レベルの火力発電で最高の効率を発揮するのは、LNG(液化天然ガス)を燃料に使って「複合発電」を実施する方法だ。複合発電は通常のガスタービンに加えて蒸気タービンでも発電機を回して、より大きな電力を作り出す。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて2回のサイクルで発電することから、「ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)」と呼ぶ(図1)。


図1 GTCCの発電設備。出典:資源エネルギー庁(NEDOの資料をもとに作成)

 GTCCは第2世代の火力発電技術のベースになる。第1世代との違いはガスタービンで発電するのと同時に、燃焼時の排熱を利用して蒸気を作り出す点にある。その蒸気を使って蒸気タービンでも発電することで、同じ量の燃料でも多くの電力を作ることができるわけだ。第1世代のLNG火力の標準的な発電効率は38%程度だが、GTCCは現時点でも52%程度の発電効率を上げている。

 このGTCCの技術を石炭火力にも応用することができる。第2世代では石炭をガスに転換してから、GTCCと同様にガスタービンと蒸気タービンを使って2段階で発電する。「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」と呼び、国内初の商用機が2013年に福島県の火力発電所で運転を開始した。さらにIGCCの進化形でCO2(二酸化炭素)を回収できる発電技術の開発も進んでいる(図2)。


図2 第2世代の火力発電技術(画像をクリックすると拡大して関連情報を表示)。出典:資源エネルギー庁

GTCCもIGCCも2020年代に1700度を超える

 LNG火力では1990年代からGTCCの導入が始まっている。東京電力を例に挙げると、千葉県の「富津(ふっつ)火力発電所」で初めてGTCCを採用した(図3)。ガスの燃焼温度は1100度と低く、その後に導入した火力発電所では1300度から1500度へ引き上げた。ガスタービンは燃焼温度が高くなるほど回転エネルギーが増えて発電能力が大きくなる。


図3 LNG火力の燃焼温度と発電効率。出典:東京電力

 東京電力は最新鋭のGTCCを神奈川県の「川崎火力発電所」に2016年から導入する予定で、燃焼温度は1600度に上昇する。発電効率は燃焼時の付随エネルギーを含めた低位の場合で61%、除外した高位の条件では55%になる。政府のロードマップでは、2020年をめどに燃焼温度を1700度まで高めたGTCCの技術の確立を目指す(図4)。


図4 第2世代の火力発電技術のロードマップ(画像をクリックすると全体を表示)。出典:資源エネルギー庁

 さらに2025年には1800度まで引き上げる計画で、高位の発電効率で60%に達する。LNG火力のGTCCで燃焼温度を継続的に高めながら、その技術を石炭火力のIGCCにも展開していく。IGCCでも1700度から1800度へ燃焼温度が向上して、50%を超える発電効率に到達する見通しだ。

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