石炭をガス化する第2世代、LNG火力とともに複合発電へ:火力発電の最新技術を学ぶ(3)(2/2 ページ)
2020年代に火力発電の中核になる技術が「複合発電」である。ガスタービンと蒸気タービンの2種類を組み合わせて発電効率を向上させる。石炭もガスに転換してから発電に利用する。現在はガスの燃焼温度が最高で1600度だが、2020年には1700度に引き上げて発電効率を60%に近づける。
IGCCは2030年代にCO2回収型へ進化
石炭火力は燃料費が安い半面、CO2を含めて排ガスが大きな問題になる。その点ではガス化してから発電するIGCCは排ガス中の有害物質が少なくて済み、CO2を分離・回収しやすい利点がある。
石炭からガスを生成するには、石炭を細かく砕いた微粉炭の状態にして、圧縮した空気とともにガス化炉の中で燃焼させる(図5)。燃焼によって発生した高温のガスを冷却したうえで、不純物を取り除いて精製してから、ガスタービンに送り込んで発電する仕組みだ。同時にガスを冷却した排熱を利用して蒸気を発生させて、蒸気タービンでも発電することができる。これで2段階のコンバインドサイクルになる。
2020年になると燃焼温度が1700度のIGCCの実用化も始まる予定で、発電効率は50%に達する。第1世代の石炭火力の主流であるUSCの40%と比べて1.25倍になり、CO2排出量は2割も少なくなる見込みだ。いまや世界各国で石炭火力を縮小する動きが進んでいる。IGCCでCO2排出量を削減して、さらにCO2を分離・回収する技術が進化すれば、石炭火力の欠点は大幅に改善する。
国内では東京電力と東北電力が共同で運営する福島県の「勿来(なこそ)発電所」で、IGCCの最初の商用機が2013年に稼働した(図6)。燃焼温度は1200度と低いが、発電効率は42%になる。このほかに中国電力とJ-POWER(電源開発)が広島県で建設中の「大崎クールジェン」が2016年度から実証運転を開始する計画だ。大崎クールジェンではIGCCを稼働させた後に、CO2を分離・回収する技術の実証にも取り組む。
2030年代になれば、CO2を回収しながら発電設備の中でリサイクルできる技術も期待できる。「クローズドIGCC」と呼ぶ技術で、回収したCO2をガス化やガスの燃焼時に再利用する仕組みだ(図7)。CO2を循環させて排出量をゼロに抑える。CO2を回収したうえで42%程度の発電効率を発揮することができる。
もう1つIGCCの進化形に「水蒸気噴流床ガス化技術」がある。噴流床方式は微粉炭をバーナーでガス化炉の中に噴射して、高温で短時間にガスを生成する。この時に水蒸気を加えることによって、ガスの中の酸素を減らして発電効率を高める技術だ(図8)。政府のロードマップでは2030年に発電効率が57%程度まで向上する。IGCCの中では最高の効率になる。
水蒸気噴流床ガス化技術を実用化できると、燃焼温度が1700度のIGCCと比べてもCO2排出量は1割以上も少なくなる見込みだ。課題は発電にかかるコストを低減することで、2030年代に実用化する商用機では第1世代のUSCと同等以下のコストを目指す。
関連記事
- 世界最高水準の石炭ガス化プロジェクト、熱効率を46%へ高める
日本が世界に誇る石炭火力発電の進化が続いている。NEDOとJ-POWERが共同で取り組んできた「石炭ガス化複合発電」では、現在の石炭火力発電で最高レベルの熱効率46%を達成できることを確認した。さらにCO2分離・回収技術や燃料電池を組み合わせた実証プロジェクトも始まっている。 - 「FUKUSHIMA」に世界最高水準の石炭ガス化発電所、オリンピックイヤーに営業運転へ
東京電力が福島県の復興と雇用創出に向けて、最新鋭の石炭火力発電所を2カ所に建設するプロジェクトを開始した。石炭をガス化してから発電する世界でも最高水準の技術を採用して、合計100万kWの電力を供給する計画だ。東京オリンピックに合わせて2020年の夏までに営業運転を目指す。 - 先行する東京電力の火力発電、熱効率60%級の新設備が相次いで稼働
東京電力は12月2日と4日に最先端のガス火力発電設備の試運転を2カ所で開始した。東日本大震災の後に緊急で導入した設備を増強したもので、熱効率を世界最高水準の57〜58%に高めた。今後4年間で合計8基の火力発電設備が営業運転に入る予定で、供給力は400万kW以上も増える見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.