CO2でバイオ燃料やプラスチック、太陽光のエネルギーが新たな価値を生む:火力発電の最新技術を学ぶ(6)(2/2 ページ)
火力発電で回収したCO2の処理方法は2通りある。1つは地下に貯留して大気中に排出させない。もう1つはCO2から価値のある商品を作り出すことだ。CO2と太陽光で光合成を促進して、バイオ燃料やプラスチックの原料を製造する技術が進化してきた。2020年代の後半には実用化が期待できる。
2020年代に大量生産を目指す
2種類のCO2利用技術のうち、微細藻類を増殖する技術は実証段階に入っている。IHIが2011年から屋外で微細藻類を培養する実験を進めていて、現在は鹿児島県で1500平方メートルの培養池で実用化に向けた試験プラントを運用中だ。すでにバイオ燃料の原料になる藻類を太陽光とCO2だけで安定的に増殖することに成功している。
藻類は油脂を含んでいて、濃縮・乾燥させたものを搾ると油を抽出することができる(図4)。その油を改質するとジェット機などの燃料になる。生物由来のバイオ燃料の中では面積あたりのエネルギー生産量が最大で、一般的なパーム油や菜種油と比較して2倍以上の生産性がある。
今後の課題は大規模な製造プラントを建設して、大量の藻類を培養できるシステムを開発することだ。規模を拡大して生産コストを引き下げながら、2020年代に実用化を目指す。広い敷地を使える海外で100万平方メートルを超える規模の製造プラントを運用する構想もある。
一方の人工光合成によるCO2利用技術は実証前の技術開発の段階にある。人工光合成は太陽光を受けると化学反応を起こす「光触媒」を使って、水を分解して水素を製造する工程から始まる(図5)。生成した水素をCO2と合成すれば、プラスチックの原料(オレフィン)を作り出すことができる。
現在は研究室レベルで光触媒などを開発している段階で、2020年代に入ってから実証プラントを使って大量生産体制を構築する計画だ。課題はいくつか残っていて、そのうちの1つが光触媒による太陽光エネルギーの変換効率である。太陽光で水を分解するための化学反応を起こすエネルギーの変換効率が現時点では2%程度にとどまる。それでも日本の技術は世界最高の水準にある。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とARPChem(人工光合成化学プロセス技術研究組合)が共同で取り組んでいるプロジェクトでは、2021年度までに変換効率を10%に高めることが目標になっている。太陽光のエネルギーとCO2を効率的に利用しながら、石油を使わずにプラスチックを製造できる日が近づいていく。
第1回:「次世代の発電効率は3割アップ、燃料費とCO2を減らす」
第2回:「第1世代の発電設備で効率を上げる、高温・高圧・高湿の限界まで」
第3回:「石炭をガス化する第2世代、LNG火力とともに複合発電へ」
第4回:「第3世代は水素も生かす、3段階で発電するトリプルコンバインド」
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