火力発電所のタービンを更新、燃料費を1基で10億円削減:蓄電・発電機器
東京電力が運転開始から20年も経たない火力発電設備の更新を進めている。コンバインドサイクル方式で高効率を発揮する発電設備だが、ガスタービンと蒸気タービンを交換して1基あたりの発電能力を2万7000kW引き上げる。合計8基の更新工事を2018年1月までに完了する予定だ。
東京湾岸に立地する「横浜火力発電所」はLNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電所で、10基の発電設備で構成する(図1)。発電能力を合計すると335万kW(キロワット)に達する。10基のうち1998年に運転を開始した8基の発電設備のタービンを新機種に交換する工事を実施中だ。
対象の発電設備はLNG火力で主流のコンバインドサイクル(複合発電)方式を採用している。コンバインドサイクルはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて2段階で発電する方式で、発電効率が高いことが特徴である。
横浜火力発電所のコンバインドサイクルを構成するタービンは3種類ある。そのうち出力が大きいガスタービンと高中圧の蒸気タービンを最新の機種と交換する(図2)。出力が小さい低圧の蒸気タービンだけは既存の設備を使い続ける。
ガスタービンは米国のGE(ゼネラルエレクトリック)製で、高中圧の蒸気タービンは東芝製を採用した(図3)。すでに8基のうち1基は交換工事が完了して、7月30日に営業運転を開始している。8基すべての工事が完了して全面運転を再開するのは2018年1月の予定だ。
更新前の設備は1基の発電能力が35万kWだったが、更新後は37万7000kWに引き上げられる(図4)。8基の合計で21万6000kWも増える。発電効率は54.1%から55.8%に向上する。これに伴って1基あたりの燃料費が年間に10億円、8基で80億円も削減できる見込みだ。
東京電力は1990年代から火力発電所にコンバインドサイクル方式を導入してきた。横浜火力発電所の設備はガスの燃焼温度が1300度クラスのACC(Advanced Combined Cycle)を採用している(図5)。現時点で運転中のコンバインドサイクルは1500度クラスのMACC(More Advanced Combined Cycle)が最高水準だ。さらに1600度クラスの設備を2016年1月に運転開始する予定で、発電効率は61%に達する。
新たに建設する火力発電所には最高効率の設備を導入する一方で、既存の火力発電所でも古い設備を更新して効率の改善を図る。電力会社にとって最重要の課題になっている燃料費とCO2排出量を削減するための取り組みである。
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