環境発電で照明を制御、電源と配線が不要な「EnOceanスイッチ」:省エネ機器
自然に存在する微小なエネルギーを使って電力を作る「環境発電(エネルギーハーベスティング)」の技術が家庭にも広がっていく。ヨーロッパを中心に普及し始めた「EnOcean」の技術を利用したスイッチが日本国内で9月に発売される。無線対応の照明器具を使えば電源と配線が不要だ。
電子部品やLED照明を開発・販売するロームが住宅向けに「ROHM Smart Lighting System」を9月から販売する。最新の無線技術と照明器具を組み合わせたシステムで、照明を制御するスイッチに環境発電技術を応用した点に特徴がある。
環境発電(エネルギーハーベスティング)は生活空間の中にある光や振動などの微小なエネルギーを利用して電力を生み出すことができる。ロームはヨーロッパで開発された「EnOcean」と呼ぶ環境発電の技術を採用してスイッチを開発した。
「EnOceanスイッチ」は振動で発生する電磁誘導によって電力を作り出せるため電源が不要になる。スイッチの情報を無線通信で送って照明を制御することができる(図1)。電源と配線が不要なことから、新築の建物でなくても導入しやすい利点がある。
新たに発売するROHM Smart Lighting SystemはEnOceanスイッチから無線で通信できる「ホームゲートウェイ」を経由して照明を制御する(図2)。照明にも無線通信に対応した製品を使えば配線の必要がない。ロームは920MHz(メガヘルツ)の特定小電力無線通信を採用したLED照明などを組み合わせて販売する。EnOceanスイッチと照明器具はホームゲートウェイから半径30メートルの見通せる範囲で使うことが可能だ。
最大200台までの照明を制御できる。タブレット端末やスマートフォンを利用して照明ごとのオン/オフや光色調整が可能なほか、部屋やフロアごとにグループ化して時間帯に合わせて自動制御するタイムスケジュール機能もある(図3)。ロームは住宅メーカーや設備メーカーを通じてシステムを販売する。
新製品のスイッチに採用した環境発電技術のEnOceanはドイツに本社があるEnOcean社が開発した。世界各国のメーカーとアライアンスを組んで標準仕様の製品を普及させる体制をとっている。アライアンスの中核になる「プロモーター」にはEnOcean社を含めて7社がメンバーになっていて、アジアからはロームがプロモーターに加わった。
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