バイオマスボイラーから出る焼却灰、泥炭地域の水はけ改善に有効活用:蓄電・発電機器
水はけの悪い泥炭地域にある農地などでは、暗渠(あんきょ)という地下に埋設した水路を利用して土中の余分な水分を排水する場合がある。日本製紙はバイオマスボイラーから排出される焼却灰セメントを加工して、暗渠に有効活用する取り組みを行っている。
日本製紙は自社で製造した焼却灰セメントで固めた再生骨材(図1)を、凍上抑制層暗渠(あんきょ)に使用する取り組みを進めている。再生骨材は、解体したコンクリート塊などを原材料とし、破砕、磨砕、分級等の処理を行って製造されたコンクリート用骨材(コンクリートやアスファルト混合物を作る際に用いられる材料)の総称。
同社北海道工場旭川事業所ではバイオマスボイラーから排出される焼却灰セメントに、砂利、水を加えて混練、振動加圧成型機で成型したものを乾燥・養生、破砕して、再生骨材を製造してきた。それらは主に道路の凍上抑制層(凍結防止のために路床に敷かれる層)や路盤材、盛土・埋戻しなどに使用してきたが、さらに使用範囲を凍上抑制層暗渠にまで広げようという取り組みだ。
凍上抑制層暗渠は、地下に埋設した水路のこと。泥炭地域など水はけが悪い農地では、水はけを良くする目的で暗渠を設置している。そのため、暗渠疎水材には、「透水性」(土などの物質が水を通す性質:地中の余分な水を排水管に逃がす)と、「耐久性」が求められる。従来、暗渠疎水材には木材チップやモミガラ、砕石・砂利など、その地域で入手しやすい資材が使用され、これまでこの再生骨材が暗渠疎水材として使用されたことはなかったという。
それを今回、北海道上川総合振興局南部耕地出張所が主体となり、再生骨材の有効活用と暗渠整備費の削減を目的に平成24〜26年に再生骨材の暗渠疎水材としての適性調査を実施してきた。その結果、再生骨材は現行の木材チップと同等以上の排水能力を持つことや排水の水質や作物収量などにも影響しないことが確認できた。この調査結果を受け、日本製紙は2015年7月から暗渠疎水材として再生骨材の出荷を始めている。
なおこの取り組みについては日本製紙が北海道上川総合振興局南部耕地出張所、北海道農業近代化技術研究センターと共同で「再生骨材(焼却灰固体化)の暗渠疎水材としての適正評価」として「第31回農業土木新技術検討報告会」で発表を行い、北海道農業土木協会賞奨励賞を受賞している。
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