下水は冬でも“温かい”、熱を取り出し工場へ供給する全国初の官民共同研究:スマートシティ(2/2 ページ)
気温が低下する冬季でも、地下を流れる下水は一定以上の温度を維持している。滋賀県はこうした下水の持つ熱を工場などの産業用施設の省エネに活用する研究を開始した。滋賀県、関西電力、積水化学工業、日水コンが共同で行うもので、産業用施設を対象に、流域下水道管路の下水熱の活用を目指す官民共同研究は全国初の事例になるという。
冬の下水は“温かい”、温度差エネルギーを有効活用
下水は冬は温かく夏は冷たいという特質を持っている(下水道の中の温度は年間を通じて15〜25度)(図1)。特に今回の研究対象となっている流域下水道管路は大規模な管路が設置されており、流量も多いため利用可能な熱のポテンシャルも大きい。
これら都市に存在する下水道と気温との温度差エネルギーをヒートポンプシステムで活用することにより、省エネやCO2削減効果が期待される。また下水熱の特徴として都市域における熱需要家が必要とする熱量と、流域下水道管の下水熱から供給できる熱量がマッチする可能性が高く、さらに採熱による環境への影響が小さいなど、河川水や地下水を熱源に利用する方法よりメリットが多いという。
特に工場の製造プロセスには年間を通じて長時間にわたり温水や蒸気を利用する工程がある。この工程に高効率な下水熱ヒートポンプシステムを利用して、例えば給水を60度まで予熱すればボイラー加熱分の燃料が削減できるなど大幅な省エネが見込まれる(図2)。
関西電力はこの研究結果が実用化されれば、未利用エネルギー資源の活用や下水熱利用対象の拡大につながり、産業用の顧客の温室効果ガス削減、光熱費の低減が期待できるとみている。なお産業用施設を対象に、流域下水道管路の下水熱の活用を目指す官民共同研究は全国初の事例になるという。
関連記事
- 日本初の下水熱利用、さらに性能高める東京
1994年に運用が始まった東京下水道エネルギーの地域冷暖房システムは設備が劣化してきている。そこで2013年から2017年までの4年間、新システムを開発、導入して省エネルギー性能を高める。2013年度の成果を紹介する。 - 下水の汚泥が年間3億3000万円の収入に、バイオガス発電を拡大する大阪市
下水処理の過程で発生する消化ガスを使って、発電事業に取り組む自治体が全国に拡大している。大阪市は市内4カ所の下水処理場でバイオガス発電を実施する。発電設備の建設から運転・保守までを民間事業者に任せて、市は消化ガスの売却収入と土地の使用料を得るスキームだ。 - 「藻」のチカラで下水を浄化、さらにバイオ燃料も生成できる新技術
東北大学と筑波大学は、藻類が生成する炭化水素を輸送用のバイオ燃料に変換する新手法を開発した。震災の被害を受けた東北地方の復興プロジェクトとして行われている藻類を活用して都市下水を浄化し、同時にバイオ燃料の生成する次世代技術開発の一環として開発されたもので、バイオ燃料の実用化への貢献が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.