ゴルフ場が太陽光発電所に変わる、全国各地に広がる建設計画:自然エネルギー(3/3 ページ)
バブルがはじけた1990年代の後半からゴルフ場の閉鎖が急増して、広大な跡地は用途が決まらないまま放置されるケースが多い。用地を造成する手間が少ないメリットを生かしてメガソーラーの建設が続々と始まった。複雑な地形に大量の太陽光パネルを設置する施工方法にも工夫が見られる。
調整池を設けて防災にも役立てる
山林を切り開いて開発するゴルフ場に対しては環境破壊を指摘する声も多い。メガソーラーに転換すればCO2(二酸化炭素)を排出しない電力を供給できるメリットがあるものの、大量の太陽光パネルを設置することで景観が悪くなるほか、将来に運転を終了した後には設備を撤去する必要がある。環境保全の課題は残るが、事業者のあいだには環境に配慮した取り組みも多く見られる。
大阪府の堺市を中心に活動する「大阪いずみ市民生活協同組合」(いずみ市民生協)は組合員に供給する再生可能エネルギーの電力を増やすために、関西圏でメガソーラーの建設プロジェクトを進めている。そのうちの1つが京都府の亀岡市にあるゴルフ場の跡地を利用した「加舎(かや)の里太陽光発電所」である。山の裾野に広がる20万平方メートルの敷地に、9MWのメガソーラーを建設中だ(図7)。
このメガソーラーを建設するにあたって、いずみ市民生協は環境配慮の方針を公表した。伐採した草木を搬出しないで埋め戻すことや、周辺の水田に影響を与えないように薬剤を使用しないことなどを掲げた。大量の雨が降った時の水害を防ぐため、ゴルフ場の中にある調整池に配水して周辺に流れないようにするほか、必要に応じて沈砂池を設置することも検討する。
ゴルフ場の跡地を利用する場合に限らず、大規模なメガソーラーの敷地内に調整池を造ることによって水害を防ぐように設計した事例は数多くある。太陽光をはじめとして環境負荷の低減を図るための再生可能エネルギーが環境を悪化させるようでは意義が薄れてしまう。
最近になってもゴルフ場の廃業は続いている。NTTタウンページが職業別電話帳データ(タウンページデータベース)をもとに集計した結果によると、2005〜2014年の10年間でゴルフ場の登録件数が全国で700件以上も減っている(図8)。2014年だけでも78件の減少があった。
バブル期に急増したゴルフ場が適正な水準に戻る一方で、跡地を利用したメガソーラーの建設は今後も増えていく見通しだ。環境に十分に配慮して、地域の活性化にもつながる再生可能エネルギーの事業拡大が望まれる。
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