災害公営住宅の屋根に太陽光発電、18市町の1900戸で1700世帯分の電力:自然エネルギー
太陽光発電の導入が活発に進む宮城県で、災害公営住宅の屋根を利用した発電事業が拡大中だ。県内の18市町に建設する災害公営住宅のうち約1900戸を対象に発電設備を設置する。年間の発電量は1700世帯分に相当して、対象になる全戸数の9割をカバーできる供給力になる。
宮城県は2014年度から災害公営住宅の屋根貸しによる太陽光発電事業を開始して、2年目の2015年度も実施体制が決まった。9月末までに完成する災害公営住宅3184戸のうち692戸に発電設備を設置する。すでに2014年度の公募で1212戸の災害公営住宅に導入が決まっていて、合計すると1904戸が発電事業の対象になる。
発電事業者は各市町から災害公営住宅の屋根を20年間にわたって借り受けて、使用料を支払いながら売電収入を得るスキームだ(図1)。2014年度分は東北電力グループの東北ソーラーパワー、2015年度分はウエストエネルギーソリューションが事業者に決まっている。すでに2014年度分は一部の住宅で発電を開始して、2016年3月までに全戸で設置を完了する。2015年度分は2016年4月から順次発電を開始する予定である。
全体の発電能力は2014年度分が4340kW(キロワット)、2015年度分が1146kWになる予定で、年間の発電量を合計すると612万kWh(キロワット時)になる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1700世帯分に相当する。発電事業の対象になる1904戸の9割をカバーすることができる。停電が発生した場合には、昼間に太陽光で発電した電力を無償で各戸に供給することになっている。
宮城県の災害公営住宅は2012年度から建設が始まり、県内の21市町で整備が進んでいる(図2)。屋根貸しによる太陽光発電事業には2014年度に16市町、2015年度も9市町が参加する。屋根の使用料は各市町に入り、合計で年間に350万円になる。災害公営住宅には集合住宅のほか、戸建てや2戸建てもあり、日射量や安全性などを考慮して事業者が発電設備の設置対象を選んだ。
宮城県は東北の中では日射量が多く、災害公営住宅が集まる沿岸部には全国平均を上回る好条件の地域が広がっている(図3)。屋根貸しによる太陽光発電を実施することで自治体の収入が増えるのと合わせて、住宅の停電対策として有効だ。2016年度以降に完成する災害公営住宅も3800戸にのぼるため、引き続き屋根貸しによる太陽光発電事業を拡大していく可能性が大きい。
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