風力発電で1万4000世帯分の電力、大阪ガスが風車13基を和歌山県に建設:自然エネルギー(2/2 ページ)
風況に恵まれた和歌山県の太平洋側で大阪ガスグループが大規模な風力発電所を建設する。13基の大型風車を設置して年間に1万4000世帯分の電力を供給する計画だ。すでに大阪ガスグループは和歌山県内の2カ所で風力発電所を運転中だが、新設する地域を含めて騒音対策が求められている。
大型風車の回転で騒音の懸念も
和歌山県の太平洋側は豊富な日射量と安定した風況に恵まれていることから、メガソーラーや風力発電所が数多くある(図3)。中でも印南町の北側に位置する広川町(ひろがわちょう)には大規模な風力発電所が集まり、大阪ガスグループの「広川明神山風力発電所」(風車16基、発電能力16MW)や関西電力グループの「白馬ウインドファーム」(20基、30MW)が運転中だ。
風力発電用の大型風車は発電能力が1MWを超えると、羽根の長さも60メートル以上になる。大きな羽根が回転することによって鳥類が衝突する可能性があるほか、回転に伴って発生する騒音や低周波音が周辺の住民に健康被害を及ぼすおそれがある。実際に広川町の周辺地域では住民から健康被害の報告が自治体に寄せられていて、風力発電に反対する声が根強くある。
新たに建設が始まる印南風力発電所に対しても地元の住民から反対の声は上がっていた。建設に先立って実施した環境影響評価による調査と対策をもとに、経済産業大臣が2015年7月に最終的な確定通知を出して建設を認めている。この環境影響評価の手続きは三井造船が2011年に開始して、確定通知も三井造船が受けた。
印南風力発電所は三井造船が2015年2月に設立した「印南風力発電」が事業者になって建設と運営を担当する。大阪ガスは子会社のガスアンドパワーを通じて印南風力発電の株式の95%を取得して、残り5%を三井造船が保有する形になる。三井造船は発電所の建設工事も請け負う。工事と稼働後の運営にあたっては、騒音対策を含めて十分な配慮が求められる。
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