水素を満たすホースの限界を超えろ、ブリヂストンが82MPaの高圧モデルを製品化:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
ブリヂストンは水素ステーションなどで燃料電池自動車(FCV)に水素を充填する際に使用される高耐圧の水素充填用ホースを開発、今後本格的に販売を開始する。
目標の5倍の圧力に耐える設計
具体的には高耐圧構造として、使用圧力82MPaに対し、高圧ガス保安法要求事項である「使用圧力の4倍」の安全率確保を上回る「82MPaの5倍」の実現を目指し、410MPa(破壊圧力)を目標に設計を行っている。また、水素ガス透過率500ml(ミリリットル)/h/m以下、ホースの充填時および格納時のホース曲げR200ミリメートル(ホースの柔軟性確保)などの数値も目標に置いた。その結果、破壊圧力は410MPa以上、水素脆化影響なし、水素ガス透過量50ml以下、ホースの柔軟性確保などそれぞれの目標を達成した(図2)。
ただ、設計時には「耐圧性を上げると、それに反して柔軟性は落ちてくる。これをいかに両立できるかが最も大きな課題となった」(ホース開発部小坂信広部長)という。同社ではホース内側の補強層に耐水素脆化を追求した高抗張力鋼線ワイヤーを採用しさらに6層にすることで高耐圧性を実現(図3)。一方で、ガス透過を抑えるため耐水素ガス透過性に優れる材料を内層に採用するなどの最適設計を行った結果、高耐圧性および充填時のホースの操作性を考慮した柔軟性を確保した。
今回開発した水素充填用ホースを用いることで従来品(70MPa仕様)と比較すると設定充填量までに到達する時間が短縮され、水素ステーションの経済性が高まる。また、充填量のアップに伴い航続距離の延長が可能となり、FCV利用者の経済性向上に貢献することになる。
現在、世界各国で水素ステーションの建設計画が発表されているが日本でも2015年に最大100カ所の建設・稼働が予定されている(関連記事)。同社によると今後、2030年にはFCVの普及が50万台となり水素ステーションは3000カ所に拡大。さらに2050年にはそれぞれ300万台、1万5000カ所に順調に伸びていくとみている。その中で水素充填ホースは1ステーションで1〜2本の需要があると予想。市場では今後、規制緩和や基準見直しも併せて、水素ステーションおよびFCVユーザーは、より経済性、安全性を追求することが見込まれるため、同社製品のニーズも高まっていくと期待する。その中で「性能には自信がある。シェアの半分以上を目指したい」(ホース事業企画部水野達也部長)と意欲を見せている。
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