島で使う電力の100%を太陽光と風力で、2種類の蓄電池がCO2を減らす:自然エネルギー(2/2 ページ)
日本海に浮かぶ島根県の隠岐諸島で日本初の実証事業が始まった。特性の違う2種類の蓄電池を変電所の構内に設置して、島内の発電設備を最適に制御する試みだ。電力の需要が小さい時期には太陽光と風力で島の電力を供給できるようになり、火力発電の稼働を抑えてCO2排出量を削減する。
太陽光と風力を8000kW増設
もう1種類の蓄電池は容量が700kWhのリチウムイオン電池で、NAS電池と比べて充電・放電のスピードが速い特性を生かす。太陽光や風力による発電設備は天候によって出力が頻繁に変動する。太陽光は雲の通過、風力は風が吹く方向の変化などによって小刻みに出力が変動するため、その変化分をリチウムイオン電池で吸収して電力を安定させる(図3)。
一方のNAS電池には昼間に太陽光で発電した電力を貯めておき、夜間に放出することで家庭などからの需要に対応する。太陽光と風力だけでも1日を通して島内の電力を安定的に供給できる体制を目指す。隠岐諸島では年間のうち需要が最も小さくなる時期には1万kW程度の電力で十分だが、ハイブリッド蓄電池システムを導入すると太陽光と風力を中心に最大で1万1000kWまで供給できる見込みだ。
現在までに太陽光と風力のほか2カ所の小水力発電所を含めて約3000kWの発電設備が送配電ネットワークに接続している(図4)。さらに旧・隠岐空港の跡地に建設中のメガソーラーなど合計8000kWの発電設備が新たに加わってくる。
隠岐諸島では主力の電力源として、石油を燃料に使う火力発電所が2カ所で運転中だ。合わせて3万2000kWの電力を供給できるが、需要が小さい時期には火力発電所の出力を大幅に抑制することが可能になる。中国電力の想定では年間に約1万トンのCO2(二酸化炭素)排出量を削減できて、110万本のスギが吸収するCO2に匹敵する。
国内では九州の離島で太陽光発電設備が増加した結果、新規の発電設備の接続を保留する事態が7つの島に及んでいる。隠岐諸島の実証事業が成果を発揮すれば、全国各地の離島で再生可能エネルギーの導入量を拡大できる道が開ける。ただし課題の1つは蓄電池の設置費用で、西ノ島変電所が導入したハイブリッド蓄電池システムの構成では約25億円かかる。当面は国の補助金が欠かせない状況だ。
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